世界は今日も廻る 5
最後、フィナーレで歩いたドレスは白。まるで花嫁衣裳みたいだと笑った崎本さん。バージンロードはパパと歩くかと言ったタケさんにはエルボーかました。
白いドレスは、最後膝丈で思いっきりイチさんに切り裂かれて、戦場の花嫁だと満足気。
その姿のまま、打ち上げ。参加者全員、ステージ衣装のままだから別にいいけど。可哀想なのは居酒屋の店員だな。一瞬ギョっとした顔してから、見事なゼロ円スマイルで個室に案内された。毎回毎回毎回毎回、ジャンクボックスの打ち上げは必ずステージ衣装で行われる。オーナー曰く、日常に溶け込める非日常こそが最高の刺激だとか。意味ワカンネ。
酒が美味しいと評判の居酒屋。とでもない種類の酒と、そこそこ美味いツマミ。基本全員ザルを通り越して枠しかないメンバーばかりだから、毎回とんでもない量を飲む。そして、平気な顔で帰っていく。化け物か。
「日本酒、熱燗で。」
「こっち、ワイン追加。今度は赤ね。」
「あ、ごめん。お兄さん生ビールくれる?面倒だからピッチャーでいいよ、三つね。」
ジョッキで飲め。つかピッチャーは多人数で使うもので個人で一個使うものじゃない。そしてグラスでもない。つか、ワインを壜のまま煽るのどうかと思う。一人一本って、計算オカシイから。ついでに言えば、ワイングラスいらないって初めに言っちゃうあたりでどうかと思う。飲んでないのに飲んだテンションで盛り上がるのもどうかと思う。いや、みんなステージやりながら飲んでるか。
「あーちゃん、飲みが足りなーい!!」
「ちょ、崎本さん。危ない。」
一升瓶抱える崎本さん。綺麗なお姉さんのはずなのに、オッサンにしか見えない。ドヤ街を歩くおっさんにしか見えない。その隣でタケさんは本日五本目のワインを飲んでいる。どっしりとした赤。重い。色々と重い。イチさんはイチさんで、いつもと同じ顔のまま冷酒の杯を傾ける。まともな飲み方かと思ったら、すでに空き瓶がゴロゴロゴロゴロゴロゴロ以下略。この個室だけ店員の入る回数が半端ないから。可哀想だから、店員可哀想だから。お代わり持ってきたら次のお代わり頼まれて、終わらないから。永久運動化してるから。さっきから何回往復してんだよ、この店員。
「アール、飲んでっかぁ?飲んでますかぁ?何か文句でもありますかぁ?この不良花嫁。」
「酔ってないのに酔ったテンションで絡むな、馬鹿。」
「んだよー、飲みが足りなくないっすかぁ?あーるさん、飲みが足りないっすよぉー。さぁさぁ、一献。」
だばだばとつがれた日本酒。取り合えず零す前に飲み干して、次が注がれる前に手近にあったウィスキーを入れておく。酒は好きだけど、ゆっくり飲みたい。チャンポンしたらマズイかと思うけど、思うだけ。別に自分の肝臓だ。どれだけ負担だろうが問題ない。そして、明日は予定がないから問題ない。
酒の肴に頼んだチーズをつまみつつ、阿鼻叫喚のテンションで騒ぐ人々を眺める。飲みだして一時間。いい加減のハイピッチで潰れる人間がチラホラ。此処に来た時点で酒量の限界を超えて飲んでるのもいるし。これで本当に帰れるのかと毎回不思議に思うけど、だいたい三時間の打ち上げが終わる頃には全員スッキリ立ち上がって正確に割り勘して帰る。
ウィスキーに飽きて、今度は泡盛。ちょこっと梅酒だの蜜柑酒だの果実系を挟んでワイン、それから日本酒に戻ってビール、最後にもう一度ウィスキー。今度は甘いの。しょっぱいツマミからはけて、残るのは乾き物と甘いもの。
「あ、すいません。このスペシャルサンデー、生クリーム増量で。それから、こっちのスペシャルホットケーキ、生クリーム増量でチョコソースとアイスデコって下さい。」
酒の閉めは甘いもの。これが甘いウィスキーと合う。酒と甘いものの組み合わせは最高だ。
「おーい、それマジで食うの?マジで?本気と書いてマジで?」
「何か問題でもあるか?」
「うん、それに疑問を持たない時点で問題だと思うぞ。つかなんだそれ、すでに生クリームの塊にしか見えないぞ?ホットケーキはどこへ消えた?サンデーとか、アイス見えないし。それはすでに生クリームだ。それ以外の存在として認めない。アール君や、俺の言葉を無視して生クリームに突入するのやめてくれたまえ。」
生クリームマジで美味い。和菓子もいいけど、やっぱり甘味って言えば洋菓子だな。これでもかと増量された生クリームは、きっと店員の嫌がらせとしか思えない。あれだけ無茶を言った個室を困らせようとしか思ってないだろう。だが問題ない。それを狙った、問題ない。しかも、この生クリームはスプレー缶ではないな。絶対に泡立てた奴だ。さすがだ。バニラ、チョコ、ラムレーズンのアイスに生クリーム、そこにさらにチョコソース。ホットケーキにたっぷりの蜂蜜。そこにバニラアイスと生クリーム、生クリーム、生クリーム。チョコソース、チョコソース、また蜂蜜。これぞ甘味の王道一直線。今度自分でも作ろう。美味しい生クリームの為に、この前目を付けたちょっと高いの買ってこよう。
うん、間違いない。生クリームにはやっぱりブランデーだ。ブランデー舐めてから生クリーム食べると、本当に最高。もとからコンビで売り出してるみたいな。双子と言っても過言じゃないな。
「おーい、俺の話聞いてますか?何か?俺は生クリームに劣るとでも?この俺を捕まえて。」
「五月蝿い。生クリーム以下。むしろ比較するとか生クリームが可哀想だからヤメテ。」
「そんな所だけ聞き取るな。」
「黙れ。口に生クリーム突っ込むぞ・・・勿体無い。」
「やってないこと想像してブルーにならないで。しかも何その目は、ゴミか?俺の存在はゴミか?」
「やめて、ゴミが可哀そう。」
「可哀想なのは俺ね。色々間違ってるからね。」
「お前の存在がな。」
「ちょっと毒舌が過ぎるよ、繊細なハートがブレイクする。壊れる、欠ける、罅割れる。」
「・・・。」
今度ゴディヴァのチョコ買って生クリーム付けて食べてみよう。牛乳に溶かして食べるのも好きだ。そこに生クリーム入れてみよう。
「おーい、そろそろ会計するぞ。」
オーナーの一言で、アチコチで潰れてたのが起き上がる。ゾンビみたいだ。つか、ホラー映画みたいだ。死霊の腸みたい。あれみながらモツ煮食べたら感情が麻痺してるのかって言われたのは何時だったか。リアルであんなの見てると、作り物のほうが怖い。ホラー映画、嫌いです。でも見ます。人間好奇心って大切だよな。うん、好奇心に殺されるタイプだ。
割り勘して、ぞろぞろと居酒屋を出る。打ち上げはこれで終了、二次会に発展することはマズない。全員それぞれに仕事を持っていて、これは言ってしまえば趣味の延長みたいなもんだ。金は発生するけど、それとこれとは別物。金銭が発生するもの全て仕事だと思うのいい加減古いと思う。
二城と連れ立って、一度ジャンクボックスへ戻る。自転車を回収。
「明日、作業場行けばいいのか?」
「来んのか?」
「一応ね。これでもサポーターだからねぇ。あー、頭痛い。飲みすぎたかなぁ?それとも途中で混入させた薬のせいかなぁ。お前は?」
「いたって健康だ。」
「あそ。間違えて薬仕込んだ酒自分で飲んだら意味ねーな。」
「まったくだ。取り合えず死ねばいいよ。」
白いドレスは、最後膝丈で思いっきりイチさんに切り裂かれて、戦場の花嫁だと満足気。
その姿のまま、打ち上げ。参加者全員、ステージ衣装のままだから別にいいけど。可哀想なのは居酒屋の店員だな。一瞬ギョっとした顔してから、見事なゼロ円スマイルで個室に案内された。毎回毎回毎回毎回、ジャンクボックスの打ち上げは必ずステージ衣装で行われる。オーナー曰く、日常に溶け込める非日常こそが最高の刺激だとか。意味ワカンネ。
酒が美味しいと評判の居酒屋。とでもない種類の酒と、そこそこ美味いツマミ。基本全員ザルを通り越して枠しかないメンバーばかりだから、毎回とんでもない量を飲む。そして、平気な顔で帰っていく。化け物か。
「日本酒、熱燗で。」
「こっち、ワイン追加。今度は赤ね。」
「あ、ごめん。お兄さん生ビールくれる?面倒だからピッチャーでいいよ、三つね。」
ジョッキで飲め。つかピッチャーは多人数で使うもので個人で一個使うものじゃない。そしてグラスでもない。つか、ワインを壜のまま煽るのどうかと思う。一人一本って、計算オカシイから。ついでに言えば、ワイングラスいらないって初めに言っちゃうあたりでどうかと思う。飲んでないのに飲んだテンションで盛り上がるのもどうかと思う。いや、みんなステージやりながら飲んでるか。
「あーちゃん、飲みが足りなーい!!」
「ちょ、崎本さん。危ない。」
一升瓶抱える崎本さん。綺麗なお姉さんのはずなのに、オッサンにしか見えない。ドヤ街を歩くおっさんにしか見えない。その隣でタケさんは本日五本目のワインを飲んでいる。どっしりとした赤。重い。色々と重い。イチさんはイチさんで、いつもと同じ顔のまま冷酒の杯を傾ける。まともな飲み方かと思ったら、すでに空き瓶がゴロゴロゴロゴロゴロゴロ以下略。この個室だけ店員の入る回数が半端ないから。可哀想だから、店員可哀想だから。お代わり持ってきたら次のお代わり頼まれて、終わらないから。永久運動化してるから。さっきから何回往復してんだよ、この店員。
「アール、飲んでっかぁ?飲んでますかぁ?何か文句でもありますかぁ?この不良花嫁。」
「酔ってないのに酔ったテンションで絡むな、馬鹿。」
「んだよー、飲みが足りなくないっすかぁ?あーるさん、飲みが足りないっすよぉー。さぁさぁ、一献。」
だばだばとつがれた日本酒。取り合えず零す前に飲み干して、次が注がれる前に手近にあったウィスキーを入れておく。酒は好きだけど、ゆっくり飲みたい。チャンポンしたらマズイかと思うけど、思うだけ。別に自分の肝臓だ。どれだけ負担だろうが問題ない。そして、明日は予定がないから問題ない。
酒の肴に頼んだチーズをつまみつつ、阿鼻叫喚のテンションで騒ぐ人々を眺める。飲みだして一時間。いい加減のハイピッチで潰れる人間がチラホラ。此処に来た時点で酒量の限界を超えて飲んでるのもいるし。これで本当に帰れるのかと毎回不思議に思うけど、だいたい三時間の打ち上げが終わる頃には全員スッキリ立ち上がって正確に割り勘して帰る。
ウィスキーに飽きて、今度は泡盛。ちょこっと梅酒だの蜜柑酒だの果実系を挟んでワイン、それから日本酒に戻ってビール、最後にもう一度ウィスキー。今度は甘いの。しょっぱいツマミからはけて、残るのは乾き物と甘いもの。
「あ、すいません。このスペシャルサンデー、生クリーム増量で。それから、こっちのスペシャルホットケーキ、生クリーム増量でチョコソースとアイスデコって下さい。」
酒の閉めは甘いもの。これが甘いウィスキーと合う。酒と甘いものの組み合わせは最高だ。
「おーい、それマジで食うの?マジで?本気と書いてマジで?」
「何か問題でもあるか?」
「うん、それに疑問を持たない時点で問題だと思うぞ。つかなんだそれ、すでに生クリームの塊にしか見えないぞ?ホットケーキはどこへ消えた?サンデーとか、アイス見えないし。それはすでに生クリームだ。それ以外の存在として認めない。アール君や、俺の言葉を無視して生クリームに突入するのやめてくれたまえ。」
生クリームマジで美味い。和菓子もいいけど、やっぱり甘味って言えば洋菓子だな。これでもかと増量された生クリームは、きっと店員の嫌がらせとしか思えない。あれだけ無茶を言った個室を困らせようとしか思ってないだろう。だが問題ない。それを狙った、問題ない。しかも、この生クリームはスプレー缶ではないな。絶対に泡立てた奴だ。さすがだ。バニラ、チョコ、ラムレーズンのアイスに生クリーム、そこにさらにチョコソース。ホットケーキにたっぷりの蜂蜜。そこにバニラアイスと生クリーム、生クリーム、生クリーム。チョコソース、チョコソース、また蜂蜜。これぞ甘味の王道一直線。今度自分でも作ろう。美味しい生クリームの為に、この前目を付けたちょっと高いの買ってこよう。
うん、間違いない。生クリームにはやっぱりブランデーだ。ブランデー舐めてから生クリーム食べると、本当に最高。もとからコンビで売り出してるみたいな。双子と言っても過言じゃないな。
「おーい、俺の話聞いてますか?何か?俺は生クリームに劣るとでも?この俺を捕まえて。」
「五月蝿い。生クリーム以下。むしろ比較するとか生クリームが可哀想だからヤメテ。」
「そんな所だけ聞き取るな。」
「黙れ。口に生クリーム突っ込むぞ・・・勿体無い。」
「やってないこと想像してブルーにならないで。しかも何その目は、ゴミか?俺の存在はゴミか?」
「やめて、ゴミが可哀そう。」
「可哀想なのは俺ね。色々間違ってるからね。」
「お前の存在がな。」
「ちょっと毒舌が過ぎるよ、繊細なハートがブレイクする。壊れる、欠ける、罅割れる。」
「・・・。」
今度ゴディヴァのチョコ買って生クリーム付けて食べてみよう。牛乳に溶かして食べるのも好きだ。そこに生クリーム入れてみよう。
「おーい、そろそろ会計するぞ。」
オーナーの一言で、アチコチで潰れてたのが起き上がる。ゾンビみたいだ。つか、ホラー映画みたいだ。死霊の腸みたい。あれみながらモツ煮食べたら感情が麻痺してるのかって言われたのは何時だったか。リアルであんなの見てると、作り物のほうが怖い。ホラー映画、嫌いです。でも見ます。人間好奇心って大切だよな。うん、好奇心に殺されるタイプだ。
割り勘して、ぞろぞろと居酒屋を出る。打ち上げはこれで終了、二次会に発展することはマズない。全員それぞれに仕事を持っていて、これは言ってしまえば趣味の延長みたいなもんだ。金は発生するけど、それとこれとは別物。金銭が発生するもの全て仕事だと思うのいい加減古いと思う。
二城と連れ立って、一度ジャンクボックスへ戻る。自転車を回収。
「明日、作業場行けばいいのか?」
「来んのか?」
「一応ね。これでもサポーターだからねぇ。あー、頭痛い。飲みすぎたかなぁ?それとも途中で混入させた薬のせいかなぁ。お前は?」
「いたって健康だ。」
「あそ。間違えて薬仕込んだ酒自分で飲んだら意味ねーな。」
「まったくだ。取り合えず死ねばいいよ。」
作品名:世界は今日も廻る 5 作家名:雪都