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聖夜がやってくる

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今年もこの季節がやってきた。
『メリークリスマス』

僕の住むこじんまりまとまったアパートは、住宅地の中にある。
この住宅地に大家さんは住んでいるからあまり大きな声では言えないが、少々お高い!
まあ、世間一般の常識の範囲なのだろうが、僕の生活においては日々節約が必要だ。
はい。稼ぎが悪いんですよー。(すねるぞ!!)
だが、昨年の12月、ちょっとひと工夫して、年明けたデートの時、彼女に18金の指環を買うことができた。そのおかげで、今年も彼女と続いている。
今年も頑張るぞ!
住宅のほとんどが一軒家。ここ最近は、あちらこちらで競うようにイルミネーションを
グレードアップさせている。とても美しい。くっははは。いや失礼。
彼女が、それを見て喜んだのかって?いや彼女は、ここへは来たことはない。
連れて来ないさ。
僕は、先月までの給料とスズメの涙ほどのボーナス(あーやっぱりいい響き・・・ボーナス!)を、日頃ぺちゃんこの財布に捻じ込み、チープ家具を扱う店やリサイクルショップを
回り、格安の鏡を購入した。米を買い、準備OKだ。
じっと、そのときを待つ。
おっ!一番手は、向かいの家か。
いつもは苦手なその家の奥様も今ばかりは福の神のようだ。
おや?隣の奥様も始めたか。ご主人も手伝うという事は、仕掛けは大掛かりになるかもしれない。これは期待大だ。
何処もが、クリスマスの日の半月程前から、夕暮れにはライトアップさせた。
仕事から戻る頃は、もう煌びやかな別世界に変貌している。
よし!!今夜から調整だ。
僕は、窓際に購入した鏡をセット。あっ、もうお気づきか?
そうなのです。鏡でそのライトいただいちゃいます。(ペコリ)
小さな部屋の窓から部屋へ、そして部屋へと鏡で送る電飾ライト。
夜中点けていてくれているから僕んちは節電(ニンマリ)
それから、米を炊くのも大切な節約。
これは、間近にならないと期待薄ではあるが、練習や前祝で結構いける。
ほかほかの白飯が炊けたら、防寒装備で寒さに負けずに窓を開ける。
うーん。ガーリックの香り、ステーキでも焼いてるな。飯をかき込む。
今日はケーキか。バニラの甘い香りは飯には合わないが、まあ贅沢は言うまい。
当日は、鼻がもげそうなほど、いい匂いがやってくる。
「ごちそうさま」
さて、夢のあと・・・。
購入した鏡は、リサイクルショップに売った。買ったときの数分の一しかならない。
まあそういうものだ。がっかりは、昨年経験したからさほどショックではない。
さて、いくらの節約ができただろうか?楽しみだ。

年が明けた。
彼女は去っていった。そうプレゼントができなかったからだろう。
あんなに節約したのに・・・何故って?
電気代も食費も本当に涙ぐましい努力の成果があった。
なのに・・・。
暖冬とは言われるものの、凍結で水道管が傷ついていたらしい。
水漏れ。
大家さんは、「直しましたから」とにこやかに挨拶に来られたが、料金までは触れてくれなかった。(おーい、もしもしー。えっ出て行けって言われちゃうかな)
小心者の僕は、請求どおりに通帳に残すことにした。
その結果がこれだ。

夢のあと。
今年の冬はどう過ごそうか。
まずは、彼女を見つけるところから、僕のクリスマスが始まる。


      ― おしまい ―



作品名:聖夜がやってくる 作家名:甜茶