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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『偽りの南十字星』 34

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『偽りの南十字星』 34

1981年
陳英明は最近意気消沈している。

「トウドウエイゴ」復讐計画が挫折したのが残念でならない。
藤和産業を倒産に導くための仕掛けに成功し、事は順調に進んでいる
と喜んでいたのに、まさかこうなるとは。

ジャムティワンが藤和を告発した段階までは、良かった。

ところが、ジャム爺さんが工場占拠し、藤和スタッフ全員を追い出した
段階で、「こりゃまずいな」と思った。
藤和を追い出してしまっては、やり過ぎなのである。
藤和は、命取りになる万年赤字会社を、喜んで捨ててしまう。

ジャム爺さんを止めようかとも考えたが、若しこれが藤和の考え付いた
見事な起死回生策で、それにジャム爺さんが同意した上での行動だったら、
このプロジェクトが陳の復讐計画であることが露見してしまう。
倒産が成功するまでは、極秘にせねばならない。
結局、陳は何ら手が打てず、事態の推移を黙視するしかなかった。

そもそも、ジャム爺さんの船会社が借金達磨であるのを承知で藤和に
紹介したのは、出資金やら農園開発費用を藤和に肩代わりさせる為
だった訳で、その借金達磨状態が、最後の最後に、陳の遠大な計画を
潰してしまったのだから、何とも皮肉である。

只、救いは娘の梅香がパリのコンセルバトワールを卒業後、カサド国際チェロ
コンクールで優勝した上、演奏会で著名なデザイナーの目に留り、チェリストと
ファッションモデルの二足の草鞋を履き、元気に世界中を飛び回っていることである。


                             続