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茶房 クロッカス その4

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 それからの数日は本当にあっという間で、とうとう今年も今日でお終いという十二月三十一日の大晦日。
 さすがにクロッカスも、明けて正月三日までは正月休みにしてある。
 しかし毎年のことだけど、休んだからといって特に何をするわけでもないので、ぼうーっとテレビを見て過ごす。そんなもんだ。
《さて、今日は今年も最後だから、最後の汚れを払うかな》
 俺は自分を励ましながら掃除に取り掛かった。
 何とか午前中に掃除を終えると、午後からは自転車に乗って、いつものスーパーに正月用の食材の買い出しに出掛けた。

 年越しの夜だ。
散々迷った挙げ句、俺は一人で初詣に出掛けた。
 近所のその神社は、国内でもかなり名の知れた神社なので、参拝客も相当の人数で、本殿まで続く階段も人で溢れていた。
 特に急ぐわけでもないので、俺は人の流れに乗って一段一段ゆっくりと踏みしめて登った。
 階段を上がりきった所には朱塗りの門があり、午前0時の鐘が鳴るまでは閉められている。そのため参拝客たちは、門の周辺に数人ずつ固まってその時を待っていた。
 何しろ冬の寒い夜中のことで、誰しもコートやマフラー、帽子に手袋などの防寒具で身を固めている。それでも寒い。一人で立っている俺は尚更だった。

 少し離れた広場の方に、赤い炎がチラチラ見えて、上を見ると灰色の煙が立ち登っていた。
 俺はゆるゆると歩いてそばまで行ってみた。
 思った通り、そこには寒さ凌ぎのための焚き火が燃えていた。
 周囲を取り巻く人の間に、何とか身体を滑り込ませ暖をとった。
《よし、時間が来るまでここで暖まっていよう》
 焚き火のそばで後ろを向いたり、前を向いたり、そんなことを何度繰り返しただろう。
 どちらを向いても暖まるのは一部分でしかないのに……。心の中までは……。
 ふと気付くと、除夜の鐘が鳴り始めていた。
 三つ四つ、五つと数える内、除夜の鐘の荘厳な響きに、俺のこの一年間の煩悩の数々が次第に清められていく。そんな気がした。
 そして、その音に押されるように俺は、過去へと続くトンネルの入口の重いドアを押し開いていた。