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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「初体験・香奈枝編」 第一話

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第一話

二学期が始まってまたしばらく佳恵と逢えない日が続いていた。それはあるきっかけでアルバイトを毎日始めたからだ。
クラスメートの仲良し3人と一緒に北海道へ来年夏休みに旅行しようと話しが盛り上がって決まったのだ。そのためには2万円ほどの交通費と宿泊費が必要と解って雄介はアルバイトを決心したのだった。
学校の帰りに駅にある洋食レストランで夜の時間でアルバイト募集をしている張り紙を見て高校生でも採用してもらえるのか聞いた。
マネージャーらしき男性から約束事を聞かされて、「守れるのなら採用します」と言われた。それは、一つに学校が許可すること、二つ目は親が許可することだった。親は問題なかったが、学校は難色を示した。雄介は遊び金欲しさではなく、家が貧しいこと、弟たちに小遣いをあげたい事にして許しを貰った。ちょっと後ろめたさはあったが、半分は
本当のことだったから、いいや、と思っていた。

雄介の父親は仕事を何度も変わっていて給料がそんなに多くなかった。その割にはいつも好きなジャズのレコードをたくさん買ってきて一人で聞いていた。母親は生活のために内職をして家計を助けていた。雄介や弟たちに十分な小遣いなど出せなかったのだ。
アルバイトの仕事はレストランのボーイだった。白いワイシャツに蝶ネクタイをして銀のトレイを手に持って注文を伺い届ける仕事だった。
なれないでこぼしたり注文を聴き間違えたりの失敗はあったが何とかこなせるようになり仲間からの信頼も出来始めていた。
ウェイターに対してそれ以上の数で社員であるウェイトレスが居た。みんな中学を出て集団就職で大阪に来ていた子ばかりだった。
雄介に興味があるのか休み時間とか終了時間の後に食事に誘われたりして、結構モテるようになっていた。
ある時、5歳ほど年上のややぽっちゃりとした武田香奈枝がバックルームで泣いているのを雄介は見つけた。近寄って、
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
と声を掛けた。傍に一緒に居たチーフのウェイトレスが雄介を見て、
「あんたには関係ないことだから向こうに行ってなさい!」と怖い顔をして睨んで言った。感じ悪い人だと思いながら、
「はい、すみません」と頭を下げてホールへ戻った。

その日午後9時に店が終了して「お疲れ様でした」と挨拶をして帰ろうとした雄介に香奈枝は近づいてきて、
「さっきはゴメンなさいね。あなたにあんなこと言わせて」そう頭を下げて謝ってくれた。
「香奈枝さんが悪いわけじゃないから気にしないで下さい」
「雄介くんて優しいのね・・・今の私には辛いわ」
「どうしたんですか?俺には何も出来ませんが・・・話ぐらいなら聞きますよ」
「うん、ありがとう。お詫びにお茶奢るから付き合って?ね、いいでしょ?」
「はい、嬉しいです」
香奈枝は店の中では一番綺麗で男子社員たちから人気があった。なじみ客も多くて香奈枝を目当てに来る男性も少なくは無かった。水商売と言えるような雰囲気ではなかったが多くのウェイトレスたちは短いスカートの制服に胸が比較的開いたシャツの服装だったから、楽しみにしてコーヒーだけを飲みに来る男性も多かった。

雄介は気になるような制服だとは思わなかったが、香奈枝の胸の大きさがはっきりとわかる姿に多分男性客や男子従業員がにやけているのだろう事は想像できた。

香奈枝に誘われるまま駅の裏口にあった喫茶店に入って二人は話を始めた。
「雄介くんは私が何か失敗したと思ったの?泣いていたから」
「ええ、そう思いました。違うんですか?」
「違うの・・・結婚の約束をしていた同じ会社の男性が他の人とも交際していたことが解ったの。チーフにそのことを聴いてもらっていたら泣けちゃって・・・」
「そうでしたか・・・俺は高校生だからよく解りませんが、いけない人ですねその人は」
「うん、私が結婚したいって強く言いすぎたから負担になって浮気したのかもしれないけど、なんだか惨めに感じて悲しかった。雄介くんは彼女がいるの?」
「はい、同じ年の子と付き合っています。この頃バイトが忙しくて逢えませんが、来年北海道に行くためにお金貯めないといけないから仕方ないです」
「そう!北海道へ行くの・・・素敵ね、彼女も一緒に?」
「いいえ、クラスメート4人で行きます。2週間ぐらい回ってこようかって計画しているんです」
「そんなに長く?どこを回るの?」
「東京から、青森、函館、札幌、旭川、網走、釧路、襟裳また札幌そして青森から日本海側にって計画です」
「すごいねえ、放浪の旅だね。若いから出来るのよね、いい経験になるわよきっと」
「そう思います」

雄介の生き生きとした話し振りに香奈枝は大人にはない純粋な魅力を感じ始めていた。
一時間ほど経って時間を気にした香奈枝は、またこうして話したいと頼んで店を出た。手を振ってさようならをして雄介は自宅へ戻った。バイト帰りはいつも11時を回る時間になっていた。真っ直ぐに帰ってないからだ。誰かに誘われなくても近所の行きつけの喫茶店で寄り道をするのが習慣になっていた。バイト先は定休日の無い営業をしていたから交代で週に一度休みをとらなくてはいけなかった。
雄介は日曜日に朝から出勤する代わりに土曜日は休ませてもらっていた。

佳恵から手紙が来た。クリスマスには逢って話しがしたいと書かれてあった。
24日のバイトを休ませて貰って夕方から食事をしながら過ごそうと書いて返事した。

「雄介くん、今度の土曜日早番なの。あなたは休みだから申し訳ないけどゆっくり逢ってくれない?ダメかしら・・・」
「香奈枝さん、何時からですか?」
「6時までだから、6時半でどう?」
「じゃあ親には食事要らないって言っておきます。店の裏に行けばいいですか?」
「みんなに知れちゃうからイヤだわ。駅の改札口の前にいて・・・梅田まで行きましょう」
「梅田ですか?」
「知っている店があるから、そこにしましょう」
「はい、解りました。伺います」
「約束よ、楽しみにしてるから」
香奈枝は怪しい笑顔で雄介に微笑んで見せた。