あいつ
冬のボーナスが出たから閉店間近に駆け込んで買ったというのにどうしてなんだ?
センスが悪いのか?
少々のこと気にするな。
私からなのが嫌なのか?
それなら根本の付き合うところから考え直さないといけないだろ。
隣りの子の持ってるのは、たぶん高価だろう。
だけど、私には、コレが精一杯なんだ。
ほら、どうだよ。
なかなか無いぞ。このショッキングピンクのベルト。
イミテーションと明らかにわかる装飾。
着けてみてよ。
ね。
お願い。
そんなに冷たい瞳で見るなよ。
ほら。
マニキュアの似合いそうな細長い爪好きだよ。
おい、引っかくことないだろ。
わかった。
私が着けてみるから、見てみてよ。
ほら、どう?似合いそうだろ。
またそんなところで私を見下ろす。
こっちおいでよ。
もうこんなプレゼントのことなんかいいからさ。
きみの温もりを感じたい。
今夜はもっと寒くなるって。
だから、きみの温もりが欲しいんだ。
せんべい布団に寝るのは嫌かい?
少し疲れた。今日は忙しかったからもう寝るよ。
おやすみ。
明かりを消した部屋であいつの綺麗な瞳が光った。
ニャー。
― おしまい ―