小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

『偽りの南十字星』 26

INDEX|1ページ/1ページ|

 
『偽りの南十字星』 26

陳英明は藤和の様子を見守っている。

タイ産パイン缶詰の出現で、苦境に陥っていることは間違いない筈である。

秘書同士が友達であるのを利用して、藤和事務所の様子が或る程度つかめる。
藤和の秘書は日本語は解からぬが、宗像所長の電話での会話の中に
ネシア・パインの言葉が最近急に増えて、雰囲気から重大事が起きている
のは間違いない様子だと言う。

陳は、これまでの人生を、若し、「トウドウエイゴ」が生きていたら、妻と子供を
捨てて逃げた罪を必ず償わせてやるという復讐の決意で、過ごして来た。
偶然のことから、その男の会社と接触が出来、今や最終段階に追い詰めている。
もう少しで、「トウドウエイゴ」が永年掛けて築き上げた牙城を跡形もなく粉砕出来る。

陳はいずれ折を見て、「トウドウエイゴ」の前に名乗り出るつもりで居る。

犯行声明なしでは、気持ちが治まらないのである。
死んだ母共々、思いっきり鬱憤を晴らしたい。

16歳で結婚し、自分を生んで間もなく夫が行方不明になり、再婚はしたものの、
三十手前で死んで行った母が、どんな気持だったか。
心の底では行方不明の侭の夫をさぞかし愛していた筈だ。
愛する夫の生死も分からぬ侭、息を引き取って行った、あの綺麗だった
母の死に顔を思い出す度に、陳はいつも涙が止まらなくなるのだった。

                       
                            続