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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『偽りの南十字星』 23

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『偽りの南十字星』 23


濡れ縁の籐椅子に腰を掛けて近づく宗像をジッと見ているのが、
ジャムティワン本人だろう。
70前後と言ったところか。
ガッシリした短躯で、厳(いか)つい容貌は、如何にもバタックらしい。

挨拶し用件を説明した。
息子にすべて任せているが、忙しかったのだろうと説明された。
どうも意識的に申請をズラしている印象である。

兎も角、大至急申請して欲しい旨伝え、留置の話もしておいた。
ホテルに寄り、村田に報告した後、空港へ向かった。

今日、ジャムティワンから聞いた話は初耳だった。
彼は、藤和をよく思っていないらしい。

今回の役員交替で自分が会長に祭り上げられたのは良いとしても、
息子のジョニーが取締役から外されたのは納得が行かないと言った。
息子が会社の金を少しばかり使い込んだのは事実だが、だからと言って、
親子揃えて一筆書かせ、頭まで下げさせたではないか。
バタック族は人前で恥をかかされるのを最も恥ずべき事と考える。

海外で合弁事業をする時は、その土地の習慣、文化や宗教にも目を向ける
事が大切だとは言われるが、これなどは其の好例ではなかろうか。
自分達の理論だけでは駄目で、時には寛容な姿勢も必要なのである。


                     続