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南 総太郎
南 総太郎
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『偽りの南十字星』 21

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『偽りの南十字星』 21

第4章  邂逅(かいこう)

陳英明はチェンマイに来ている。
ここは、タイ空軍の施設の一つ、ランナゴルフクラブである。

チェンマイは、バンコックから飛行機で僅か1時間の距離だが、
気候が全く異なり、日本の様に紅葉が見られるのである。
それ故、王様の避暑地用の離宮もある。

一部競馬場と接した、このゴルフ場は陳の好みの場所である。

よく、タイ政府の要人達とプレイしながら、取引の情報を得る。
勿論、費用は総て陳持ちである。

情報は貰うばかりではなく、陳の方からも提供する事もある。
五年前になるが、パイナップルの世界的需要が伸びつつある事
を知って、早速タイの担当相に忠告、タピオカからパインへの
農業政策の変換を促したこともある。

もっとも、これは陳の私的事情からの発想によるものであったが。

今回は、バンコック市内での高速道路建設計画に関する情報を
得るために飛んで来たものである。
未だ、関係企業を日本から連れてくる段階ではない。
いずれ、そうするべく、地均(じなら)しに来ている。
早々と手を打って行く事により、他を制する事が出来る。
それには、どんな小さな情報でも軽視せぬ事が最重要である。

五年前、銀行の応接室で藤和産業を紹介された時も、桂木専務
との夕食後事務所に帰り、早速藤和産業なる会社を「会社四季報」
で調べた。流石に、銀行が紹介するだけに、上場企業ではあった。
東京証券取引所第1部の銘柄である。

役員欄に代表取締役社長「藤堂英吾」とあるのを見て驚いた。
「トウドウエイゴ」と読むだろう。
自分の捜していた「トウドウエイゴ」ではなかろうか。
  
日本企業の友人の協力で興信所の記録から「藤堂英吾」なる人物の
経歴を調べて貰った。

その結果、22,3歳の頃台湾で警察官をしていたことが判った。
陳も最初は同姓同名では、とは思っては見たが、台湾と警察官
の二点での合致から、本人であることを確信したのだった。
尚、シンガポールに従軍していたかどうかは不明だった。

その後早速、陳英明の遠大なる計画が実行に移された。

先ずは、第一段階として何としても藤和産業を舞台に引きずり上げる事。
それには、好条件(甘い蜜)を以ってすれば誘い込めるであろう。
其の上で、致命的な打撃を与えれば企業倒産という最終場面に追い込
める筈である。

                                      続