小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

『偽りの南十字星』 15

INDEX|1ページ/1ページ|

 
『偽りの南十字星』 15

スマトラでは新事業が開始されていた。

パイ缶製造工場は若い女性達に満ち溢れ、その華やかさは一通りでない。
従来働き場所が殆ど無かった町に、突然現れた広大な職場は募集前から
問い合わせが殺到し、人集めには全く苦労を要しなかった。

藤和産業も台湾産からネシア産へのスムーズな転換が出来、ほっとしている。
国内外の顧客の評判も上々である。

工場は結局ぺマタンシアンターに建設された。
落成式には、遠路遥遥シンガポール政府の要人が駆け付けて呉れた。
彼は元軍人で元帥の地位にあった、色々うわさの立つ名物副首相である。
出席者一同もこれには驚いた。
そして、今更ながら、陳の顔の広さに敬服した。

日本、シンガポール、インドネシア三国による合弁事業の認可第一号と言う華々しい背景
も手伝っての事だったかも知れない。

藤和本社からは7名ほどの社員が派遣され、総務、経理、メダン事務所に配置された。
このパイ缶製造会社は、「インドネシア・パイナップル社」と命名され、社長にはネシアパートナー
のジャムティワン氏が就任、副社長に永田市郎と陳英明が名を連ねた。

原料の集荷もジャムティワンの力で問題なく進んだ。
従来の生食向けより高値で引き取る条件で、農家数軒と契約栽培の形をとった。

ところが、暫くすると農家が揃って値上げを要求してきた。
工場の好調な様子を見ての事であろう。

仕方なく、若干の値上げに応じてやった。

一度味をしめたら止められない。

農家が一斉に再度の値上げを申し入れて来た。
断れば、契約を解消すると強気の姿勢まで示した。
完全に足元を見られている。

会社側も、そうそう値上げに応じていては利益が出ず企業として成り立たない。

関係者一同協議の結果、矢張り自家栽培に踏み切ることになった。
実は、工場の常時稼動の為には、原料が少な過ぎる事も理由としてあった。

その必要資金は、結局籐和が引き受ける事になった。

本来、ネシアのパートナー、ジャムティワンの担当分野だが、昨今船会社の業績が
不振で既に銀行からの借入金も嵩み、これ以上は借りられないと言う。

実を言うと、彼の出資金も同じ理由で、既に藤和が肩代わりしている。

土地の賃借が始った。
農園開発が進み、陳の計らいで台湾から数名の農業技術者もやって来た。
パインはスムースカイエン種に決まり、愈々栽培が始った。

     続