だれかと僕と
「幸せ」と「不幸」に確実な境界線なんて引くことはできないと。
仮に今、目の前にサラダがあったとする。
その中に自分の大好きな野菜と大嫌いな野菜がちょうどぴったり半分になるように
入っていた。
この場合「幸せ」か「不幸」かと聞かれれば必ず同じ答えなど返って来ない。
要するにそれぞれの気持ちや考え方で決まり、変わってくるということだ。
だから「幸せ」や「不幸」を押し付ける人間はほんとうのそれらの意味を
これっぽっちも理解していない。
それこそほんとうの「不幸」だ。
目が覚めると一面の黒のなかにいた。
光もないから陰もない。
だから目を開けていても閉じていてもまったくかわりがない。
足が地面についているのかさえわからない。
ここにあるのは闇とその何倍にもなる孤独と不安だけだ。
時が動いているのかわからないが、動いているのならもうじきに1時間ほどたっていても
おかしくはないだろう。
いい加減に頭がおかしくなりそうだ。
その時、目の前に髪の長い少女があらわれた。
暗い闇の中で唯一の光だった。
「コータ君!」
その子が僕に抱きつく。
そうか。
僕の名前は「コータ」というのか。
でも僕は彼女のことをまったく知らない。
まずなんでこんなに他人事なんだろう。
自分のことなのに。
「わたしのことわかる?」
まったくおぼえていない。
素直に首をよこにふった。
彼女はショックをうけたように
「かわいそうなコータ君。
大丈夫よ。すぐにわたしが治してあげるから。
安心して。」
と、少し興奮ぎみに僕に言った。
彼女が僕に手をかざした。
それから1拍も開けずに青白いまるで龍のような電気が全身を支配した。