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ロイヤル神父
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novelistID. 33701
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Their bent fortunate town  第一話

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深い深い森の奥。
その『街』は存在する。
誰もが幸せになれるという、夢の街。
このお話は、そんな街に住む少し歪で、すこし奇妙な住人の物語ーーー。

〜Their bent fortunate town〜

真っ暗な夜道を歩く。もう暗闇に目も慣れてしまった。
この街には、朝も昼もないのだから。
「まぁ、無くても困らないしね。」
自分の台詞にうんうんと相槌を打つ私。端から見れば頭のおかしな人だろう。
いや、人にも見えないか。自分の体に視線を落とすと、見事に継ぎ接ぎだらけの醜い姿だ。
かの有名なフランケン・シュタインを連想させる。
まぁ、そんな自分の体も見飽きてしまっているから、どうでもいいのだけれど。
今日は友人のルカと夜の林檎狩りにでかける予定なのだ。うふふ。楽しみ。
林檎は好きだ。甘くて、酸っぱくて。
「・・・ん?」
カラカラカラ、と乾いた車輪の音が前方から微かに聞こえる。・・・ああ、最高に会いたくない人物と私は鉢合わせしてしまったらしい。心のなかで大きくため息を尽き、私はとりあえず歩んでいた足を止めた。折角、いい気分で歩いていたのに、台無しだ。
「あれぇ?そこにいるのはツナギちゃんじゃないか!」
「・・・こんばんわ。エスト先生。」
「Guten Abend!」
ドイツ語での挨拶はいつもの事だ。
うむ。面倒な人に会ってしまった。この人はエスト先生。頭に刺さった包丁がチャームポイントの、この街唯一のお医者様だ。
・・・ヤブだけど。
「ツナギちゃん。今、私のことをヤブだと思ったね?君の体を解体してあげようか。」
「い、嫌だなぁ〜先生は立派なお医者様ですよぅ」
くそ。読心術でも使えるのか、このヤブ医者は。
「ふふ、まぁいいさ。今日の私はとても気分がいいからね!」
キラキラと目を輝かせて、エスト先生は傍らの『彼女』を愛おしそうに眺めて言った。
「久しぶりのソフィアとのデートなんだ!」
ソフィアは先生の恋人兼ペットの犬だ。犬といっても体は立派な女性のものだし、手足がないのと目が見えないだけで、普通のとは言えないが人間だ。
「最近はあの双子共に手を焼かされていたから。」
「ああ、ミルクとココアですか。」
ミルクとココア。姉弟でお互いの体がくっついてしまっている結合双生児の双子ちゃんだ。
「そ。もー、今回は特に酷かったよ!!姉の方が綺麗に精神壊れちゃってて、私のところに来た時なんか、なにを食べてたと思う?真っ赤に染まった首と胴帯の離れた白うさぎだよ!!ったく、弟は弟でテンパっちゃってたし、診療所も汚れるしで最悪だったね!」
「はぁ、ご愁傷さまでした。」
エスト先生の話は続く。
「あぁ、でも前は誰のか分からない目玉を飴玉みたいに転がしてたし被害は今回のが少ないのかな?
いくら心の広い私でも、あの時ばかりはドン引きしたし?あぁ、それでソフィアと私の今夜のデートの計画なんだけれどーー」
「先生、ごめんなさい。私これからルカとの約束があるので、そろそろ行きますね。」
ソフィアとの話をされると約5時間はここから動けなくなってしまう。それ程に先生のソフィアへの愛は強いのだ。私だったら、絶対にお断りだけど。
「ええええ、これからがいいところなのに・・・」
あからさまに残念な顔をする先生に私は苦笑いを返す。
「ごめんなさい。じゃあ、失礼します。」
「あ、ツナギちゃん。」
そそくさと立ち去ろうとする私を先生が引き止める。まだなにかあるのだろうか?
「ルカくんに、今度診療所に来るように伝えておいてよ。」
「!・・・分かりました。」
「Tschuess!」
最後に先生はドイツ語でサヨナラ。と言ったきりソフィアと中睦まじく暗い夜道に消えていった。
「・・・急ごうか」
ルカが待っているだろう、森の入口に私は急ぎ足で向かった。

続く。