新しい家族
「……何だそいつは」
少女スピカの真向かいに寝転がっている黒猫――闇丸(やみまる)は、不機嫌そうに尻尾を揺らしている。
うら若い飼い主の膝の上には、小さい猫が小さな声で鳴いている。
みぃー、にぃー、みうみう。
なんて愛らしい声。
「愛らしいね」
「答えになっとらんわ」
堂堂とスピカ(の膝)を独占している子猫。
差し出された指にじゃれるように甘噛みしては、そのまま小さな手足でスピカの指を蹴り上げる。蹴り上げるといっても、肉きゅうがぷにっと当たる程度だ。可愛いとしか言いようがない。
「ぷにぷに……」
確かにスピカは愛らしいとは認めてやる(阿呆だがな)。しかしこの餓鬼猫は……誰に断って私のものを陣取っているのだ。あの膝は私の指定席だというのに!
なんて、内心思っていることを表面に微塵も出さず、闇丸は飼い主の膝でじゃれる子猫に形だけのでこぴんをしてみた。
「なぅ!」
子猫は奇襲に驚いたのか、ころんと転がった。瞳孔が瞬き、大きく丸くなる。
その様子に、何かがピンときた闇丸。
確かにこれは、少しは可愛いかもしれない。スピカの言葉に頷いた。
(さあ名前どうしようかな?)
(……まだ決めていなかったのか)