少女機械人形コーパス 第二幕
同日
午後07時11分
地底都市マヌス Cエリア 医療ゾーン
713号室
東堂
「ここか…。」
ウィィィン<SE>
東堂
「尾ヶ崎?入るぞ。」
尾ヶ崎
「あ…ああ…。」
<スチル知性の無い尾ヶ崎>
東堂
「尾ヶ崎?!一体…。」
そこに居たのは尾ヶ崎では無かった。
いや、確かにその姿は尾ヶ崎久美子そのものだ。
しかし彼女からは考える力というものが失われていた。
彼女にはヴィロネカートとの戦闘の記憶も、人としての感情も備わっていたが、知性が無い為に何故こうなったのか、何故自分は今ここにこうしているのか…それを考える事が不可能になっていた。
気づけば尾ヶ崎は泣いていた。しかし何故泣くのかが分からなかったから、次は笑ってみた。
尾ヶ崎
「ふ…ふふ…。」
笑うという感情は何か違う気もしたが、彼女には何故それが違和感を感じる行為であるのか、それを考える事がもう出来ない。
尾ヶ崎
<昔みたいには呼んでくれないの?>
寂しそうに問いかけてくる在りし日の尾ヶ崎が、東堂の思考を支配する。
東堂
「俺は…俺はもう誰とも関わらない。」
東堂
「う…あ…あぁ…くそっ…ちくしょう…!」
遠くを見つめたまま笑い続ける尾ヶ崎の隣で、東堂は一人嗚咽した。
作品名:少女機械人形コーパス 第二幕 作家名:有馬音文