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てっしゅう
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「新・シルバーからの恋」 第九章 結婚式

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「ダメに決まっているじゃない!そんなこと。昔だからと言って良いことと悪いことがあるんじゃないの」伸子も助け舟を出した。
「みんなありがとう。いいのよ話しても・・・済んだことだし、今では懐かしい思い出なんですもの」

本人の悦子からその続きを話し始めた。

「確かに泣かされたわ。三年の夏の頃よね。クラスに好きな子がいたの・・・剛司くんがちょっとした弾みで私に触ったとき、みんなが、徹くん!助けてあげなきゃ、って言ってくれたのよね。そうしたら・・・ボクには関係ない・・・って言われたのよ。剛司くんが、お前振られてやんの!と大きな声で言うものだから・・・泣いちゃったのよね」
「そうだったね・・・私も側に居たから覚えている気がする」伸子が懐かしむように言った。

「お姉さんはその子が好きだったのね。そういう人だったのね」美雪が周りを気にせず言った。
状況が解る恵子と伸子は続ける言葉に困った。

「初恋だったのよ・・・きっと。でも、振られてなんかいなかったのよ。高校の時には付き合っていたから・・・あなた、ゴメンね、こんな話しし出して・・・」
「大丈夫だよ。そんな話しなんて誰でもあるから・・・副島だって気にしないよ」
「そうね、そうよね。思い出話なんだもの・・・その子が好きだったのは美雪だったのよ、ね?」
「お姉さん!そんなこと・・・言っていいんですか?みんなびっくりしていますよ」
「私はそう思っていた・・・他に好きな子が居るんだって。部活の後輩だったあなたのことが直ぐに浮かんだ」
「先輩は確かに好きでした。かっこいいし・・・勉強も出来るし・・・でも私は幼すぎたから相手にしてもらえなかった。だって、その歳の初めは小学生だったんですもの」
「じゃあ、もし美雪さんが三年生だったら・・・高校に行っても付き合っていたってなるのかな?」
「剛司さん・・・きっとそうなっていたでしょうね」
「そうか、じゃあ、悦子さんと美雪さんはライバル同士だったわけだ」副島は明るくそう話した。

この話はここで終わった。これ以上話すと、再会のことにまで及びそうな気配だったから悦子は辞めにした。水着になって、海に入ろうと順次がみんなを誘った。サーフィンには波が弱かったが、泳ぐには適していた穏やかな海だった。泳げる剛司は沖の方まで元気よく泳いで見せた。借りてきた浮き輪につかまって美雪や悦子は浮かんでいる。
「お姉さん、ゴメンなさい。余計なこと言っちゃって」
「いいのよ、、気にしてないから・・・もう思い出すこともないでしょうから、ちょうど良かった」
「うん、そうですね」

海から引き上げて部屋に戻って着替えを済ませ、ランチを取るためにアラモアナまでバスで出かけた。巨大ショッピングセンターは日本人が多く買い物をしておりここが外国なのかという雰囲気であった。フードコートにまず行って、それぞれに好きなものを買い、テーブルを囲んだ。

「大きいわねここは・・・このパスタ一人分って頼んだのに、こんなあるのよ。食べきれないわ」恵子は誠二に少し食べなさいよ、と言わんばかりだった。サンドイッチにした誠二は少しつまんで仲良く食べていた。美雪と行則の挙式のことを恵子は発表した。

「あしたホテル内にある教会で式を挙げます。時間は11時。遅れないように15分前にはみんな中へ入ってね。衣装は持ってきてない人は借りて下さい。帰りに私と一緒に受付ロビーで頼みますから」
「美雪さんのウェディングドレスが見られるのね・・・楽しみだわ、きっと素敵でしょうから」伸子は羨ましそうに言った。うなずくみんなに、副島は言葉を添えた。

「皆さんのおかげです。明日晴れの挙式をこうして迎えることが出来、本当に嬉しいです。妻が亡くなって失意にあった私を平川は救ってくれました。こんなに可愛いそして優しい妻を再び娶る事が出来たのですから。皆さんの前で誓います、必ず美雪さんを幸せにします・・・」と。拍手がなった。悦子はもう泣いていた。つられて恵子も伸子もそして誠二まで泣き出した。

「美雪・・・本当に良かったね。私もあなたも幸せが掴めた。剛司くんは複雑な気持ちなんだろうけど祝ってあげてね」
「悦子・・・当たり前だよ。美雪さんの幸せを何で喜べないと思うんだ?いまは俺だって幸せなんだよ。みんな幸せになってこれからを生きることが出来るんだ。そのことに感謝しなきゃ・・・健康とお互いの気持ちを思いやることを忘れないようにしようぜ」
「いいこと言うのね、たまには」泣きながら恵子が言った。
「当たり前だよ!一番俺が全部知っているんだから・・・」

美雪と行則のウェディングベルは鳴らされた。晴れ渡ったハワイの空に響き渡る幸せの鐘の音は遠く日本のそれぞれの家族にも届いたことだろう。

手に持った小さな籠から花びらを二人に投げつけてみんなは祝福した。大きな拍手の後再び向かい合ってキスをした。美雪の素晴らしいウェディングドレス姿が女心をくすぐる。

「素敵ねえ・・・なんて似合ってるの!私も着て見たいわ」
悦子は夫にそう言った。
「生まれ変わったらここで結婚式を挙げよう」
「次の世でも私でいいの?」
「その次もまたその次の世でも悦子しか考えられない」
「あなた・・・」

「皆さん、今日は本当にありがとうございました。美雪共々厚くお礼を申し上げます」副島は感謝の言葉を述べて頭を下げた。全てが終わり衣装を着替えて再び教会の前に集まった。剛司は内緒にしていたが美雪へのプレゼントを用意していた。それは鍵の付いた宝箱だった。

「美雪さん、俺からのプレゼントだよ、はい・・・」
「ほんと!嬉しい、何かしら・・・まあ、素敵な宝箱」
「今日の思い出をその中に仕舞って鍵を掛けておくんだ。いつの日か辛い事や悲しい事があったら、鍵をあけて中を覗いてご覧・・・きっと気持ちが和むから。いつまでも仲良く暮らすんだよ。行則さん・・・よろしくお願いしますね」
「中山さん、ありがとうございます。ご心配には及びません。戴いた宝箱を開けさせるような事は致しませんから・・・」
「頼みましたよ。今夜は宴会にしよう、恵子どこか知らないか?」
「フロントで聞いてみるわ。夜の浜辺でバーベキューなんかもイイね」
「そりゃ、名案だ!そうしようぜ」

プライベートビーチに続く砂地でテーブルと椅子を借りてやれる事になった。満天の星空を眺めながらビールが進む。会話も進む。また昔話に花が咲いた。順次や行則にはちょっと辛い会話が飛び交う。