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てっしゅう
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「新・シルバーからの恋」 第九章 結婚式

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第九章 結婚式


順次は悦子の大切な部分にそっと触れた。
「あなた・・・ここではイヤ。美雪に聞かれてしまうから」
「声出さなきゃいいよ・・・」
「無理なこと言わないで!知ってるくせに」

悦子は最近特に声を出すようになっていた。もっと感じたいという想いから自然に発してしまうのだ。自分の声とそれに応える夫の声がより一層快楽の世界へと引きずり込んでゆく。
60になって初めて知る男と女の悦び・・・抑えることもためらわずに貪ってしまうのだ。

「美雪、出たわよ。使って・・・」
「はい、ありがとう」

行則が先にバスルームに入った。追いかけるようにして美雪も入る。
「おい、一緒に入るのか?」ビックリしたようにバスタブから振り返った。
「いけない?」
「言わなかったから・・・驚いただけだよ。平川たちに知られるといやだろう?」
「ううん、私は平気。あなたは恥ずかしいの?」
「そりゃこの歳だからな・・・もっと若ければ平気だけど」
「気持ちだけは若いの。あなたもそう思って欲しい」
「うん、それは大切なことだな・・・おいで・・・」

美雪は恥ずかしがることもなく行則にくっついた。シャワーをかけて貰い、はじくように落ちる水滴を見て、「まだ大丈夫だわ」そう感じていた。

「今度は私がかけてあげる」そう言ってノズルを手に持った。
首から順番に下へ降ろしてゆく。63歳の行則は昔スポーツと山登りをして鍛えた筋肉が多少残っていて、美雪にはたくましく感じられた。しかし前に廻るとそこにははっきりと分かるお腹が見えた。
「あなた、少し痩せないといけませんわね」
「おい、あんまり見るなよ・・・」
「じゃあ、ここは・・・」
「やめろ・・・美雪・・・」

シャワーをハンガーに引っ掛けて美雪は抱きついた。
「好きよ・・・美雪のことも好き?」
「もちろんだよ」
「イヤ!大好きって言ってくれなきゃ・・・」
「大好きだよ、美雪」

シャワーの流れる音と唇を吸う音が浴室にこだましていた。

身体を拭いてバスルームから出た二人は冷たいものを飲みながら少し話をした。

「行則さん、日本に帰ったら娘と会って頂けるかしら?ちゃんと結婚したことを報告したいの」
「ああ、そうしよう。まだ会っていなかったから、挨拶しないといけないね。それから、俺は息子が海外に行っているから会わせられないんだよ、今は」
「ありがとう。そうでしたか・・・じゃあ、お帰りになられたらご挨拶させて下さい。それと、前の奥様のお墓に一度お参りさせて下さい。お姉さんにもそうしなさいって言われていましたし・・・構いませんか?」
「美雪、いいのか?琴美の墓参りをしてくれるのか?」
「琴美さんって仰るのね・・・素敵なお名前。お叱りを受けるかも知れませんが・・・ご挨拶させて下さい」
「解った・・・ありがとう、喜んでくれるといいけど・・・あいつにしてやれなかった分を美雪にって思っているんだよ。そうすることが俺の使命なんだって・・・琴美だってそう願っていると思うし」
「行則さん、本当はとても愛してらしたのね・・・琴美さんのことを。私なんか・・・自分のわがままから剛司さんと離婚して、その後・・・」
美雪は言えなかった・・・いまさら言ってはいけないと思っていた事だったからだ。

「言わなくていいよ・・・お前のその気持ちだけで。琴美は許してくれているよ俺との結婚を。亡くなる前にな、今までありがとうって言ったんだ。そして、今度出会う人には私のように寂しい思いはさせないであげて・・・そう言ったんだ」
「行則さん・・・私にはあなたの優しさだけが救いなの。こんな女なのに、疑うこともしないで愛してくれて・・・あなたが一生琴美さんのことを忘れなくても構わないの。ううん、忘れて欲しくないの!本当よ。私は一からあなたに愛されるようにするの・・・いつか気持ちの中で琴美さんと入れ替わることが出来たら、嬉しいわ」
「美雪・・・すまない、俺は思い出さないでいようといつも考えていた。美雪と琴美は違う。いまさら亡くなった妻を回顧しても何も得られないって・・・今お前の気持ちを聞いて、はっきりと解った。ゆっくりと時間をかけて忘れさせてくれ・・・美雪の優しさに甘えさせてくれないか?」
「はい、大丈夫よ、私は・・・強いから」

にこっと笑った目には、もう零れそうに涙が溜まっていた。

美雪は直ぐに抱いて欲しいと思った。抱かれることで少しずつ行則の想いの中に入ってゆける・・・そう信じているからだ。かすかに悦子の部屋から声が洩れていることに美雪は気付いた。行則の顔を見た。少し耳が遠いのか気が付いていないようである。それはやがてはっきりと聞こえるような大きさになり、お互いに目線を合わせるとにやっとするようになった。

「ねえ、私たちも行きましょう・・・お部屋に」
「うん、そうだな。聞いてられないしな」
「お姉さんって・・・激しかったのね、知らなかった」
「そんなことを言うもんじゃないよ。当たり前のことなんだから・・・」
「私もそうなの?」
「聞くなよ、そんなこと」

行則は順次に聞いたことを思い出していた。部屋に入ると美雪はすぐに抱き付いてきた。『ゆっくりだ・・・落ち着け』そう自分に言い聞かせながら美雪と向かい合った。丁寧に時間を掛けてスキンシップを楽しんだ。じれったくなったのか美雪は誘うように行則の十分になっているところを握ってきた。

「美雪、お前が上になってくれ・・・」
「えっ?・・・うん、いいけど」そう返事してゆっくりと起き上がり行則にまたがった。少し前かがみになって行則と視線を合わせるようにして、美雪は少しずつ動きを早めていった。

『これは・・・ひょっとしたらしばらく我慢が出来るかも知れない』嬉しくなった。よし頑張ろう、そう気合が入った。

「行則さん・・・いいわ・・・まだ大丈夫なのね・・・」
「ああ、全然大丈夫だよ。もっと動かしてもいいぞ!」
「そんな・・・美雪ダメになってきた・・・」

どれぐらいの時間を我慢出来ていただろう。行則はすでに大きな声を出している美雪に、「もう我慢できない・・・」そう告げて果てた。いつもとは逆に美雪がもたれかかってじっとしていた。
「行則さん・・・どうしたの?凄かったわ・・・」
「うん、ちょっとね・・・順次に教わった」
「そう・・・これからこうなのね」
「多分・・・嬉しいか?」
「ええ、毎日でもいいわ」
「それは、勘弁してくれ・・・」

二日目の朝を迎えた。美雪の部屋を悦子はノックした。着替えを済ませていたから直ぐに扉を開けた。

「おはようございます」
「準備出来ていたのね。早起きなのね」
「ええ、ゆっくりと眠れましたから」
「良かったじゃない。じゃあ、台所へ行きましょうか」
「はい、私がコーヒーとパンを準備しますから、お姉さんはハムエッグを作って戴けますか?」
「解かったわ、そうしましょう」

4人は揃ってテーブルに着き、朝食を採り始めた。

「恵子からあなたたちの式の事、聞いていなかったわね。いつなのか知らされているの?」
「お姉さん・・・明日みたいなの。ここのホテルの敷地内にチャペルがあったでしょ?牧師さんの都合で日が決まっているようなの」