文字の世界
様々な色の、様々な形の「雨」が降ってくる。
私にぶつかって零れ落ちてゆく
誰かが書いたであろう雨が。
ここには私一人しか居ない。
しかし淋しくはない。
ここは文字の終点なのだろう。
人を渡って廻って行った文字たちの
持ち主がいなくなり、忘れられたりした彼らの。
この広い真っ白な空間に行き着くと
幾らか留まって、そのうち流れる様にふっと消えてゆく。
木や蝶や建物、風。
奔るようなものだったり、丸みを帯びていたり、整っていたり。
誰かが。
大人が、子供が、機械が。
この文字たちもいつかここへ帰ってくるのだろうか。
電車に乗るようにして色々な場所から集まって、
一緒に戻ってくるのだろう。
黒を中心に他のもたくさん
溢れるよりも速く。
また他の場所で雨が降っている。
音を立てながら。
ここには文字しかない。
あ、 私も。