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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『偽りの南十字星』 2

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『偽りの南十字星』2

1941年12月8日、日本軍はマレー半島コタバルに奇襲上陸、1月31日にはジョホール・バルに到達、2月8日シンガポール上陸、僅か1週間後の2月15日には、シンガポールを占領してしまった。
勿論、英国軍との激戦を交えながらである。

そして、「敵性分子の排除」の名の下に、2月下旬から3月末に掛けて、その間3回に分けて計5、000から数万人の華僑を敵性分子として殺害した。その鑑別はいい加減なもので、義勇軍、共産党員、抗日分子他の筈が、一般の市民も多く含まれていた。

現在空港となっているチャンギ他の海辺で多くの華僑が機銃掃射で殺害、又現セントサ島沖では船から突き落とされ、機銃掃射で殺害され、多くの死体が海岸に打ち寄せられたと言う。

陳英明は父親の陳聡民と1941年秋に台湾から移住していた。
母の梅麗が病死したのを機に、シンガポールへ職を求めて来たのだった。

今でもハッキリ憶えている。
その日朝、屋外が騒々しくなったと思うと、銃剣を手にした憲兵達がいきなり室内に入って来た。
その日は、成人男子は総て定められた場所に集合せよとの話だったが、陳総民は体調を崩して
外出出来なかった。
しかし、憲兵は容赦しなかった。
寝ていた聡民を無理矢理起こすと引きずって行ってトラックに乗せた。
「とうさん、とうさん」
追う英明を若い憲兵が銃剣で小突いた。
「邪魔だ、どけ」
そして、声を張り上げた。
「藤堂分隊長殿。収容完了しました」
「よし、出発」

トラックは走り去った。
アッという間の出来事であった。
見送る英明の目から涙が止め処なく流れていた。
異国の地に一人残された、十二歳の子供が、これからどの様にして生きて行けばよいのか。

「トウドウ」の名が陳の脳裏に刻み込まれたのは、これが二度目であった。


                                             続