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なっちょん
なっちょん
novelistID. 25113
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蒼刃

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慶応三年の夜は、墨を垂らした様な闇で、何も無しでは一寸先も見えない。

 都である京の夜も、ご多分に漏れず暗く深い。

 だが、今日の様な妙月の蒼夜である場合は話が違い、随分と見通しが良かった。

 この鮮やかな闇を、男が三人歩いている。

 先を歩く者は、身なりも豪奢であり、随分と酒を食べたらしく、足取りが危うい。

 朱の鞘と金象嵌の鍔、華やかな拵えの差料で、洒落た武士に見える。

 後ろ二人は自然体の者と少し緊張した様子の者で、最後尾の緊張している者は提灯を携え、ひたひた歩く。

 二人は浅葱色にだんだら模様の羽織りを着ている。
 
作品名:蒼刃 作家名:なっちょん