当然の彼方 第二話
女の現れ
俺の目の前に現れたあいつは夢の中とちっとも変わらない格好をしていた
おとぎ話に出てくる魔女のような紫色の大きな帽子
変わった服も相変わらず
色素の抜け切った白い髪と赤い瞳
髪の先のほうだけがかすかに青い
でも、あいつはあんな冷め切った目をしたやつだったんだろうか
わからない
そして、俺はあの幼かった自分が何歳であったかもわからない
16の俺はあのころから十年たった俺なんだろうか
だったら俺は…もうじき死ぬんだろうか
少し、心臓がズキリと痛んだ
あの夢が本当だと、現実だと、この女の登場ですべてが決定付けられたから
女はふわりと地に足をつけた
妙に半透明だった体が濃くはっきりとしたラインを描く
女はただ、冷めた目であたりをきょろきょろと見渡した
女の格好があまりに奇妙だから行き交う人々みんなが二度見する勢いで通り過ぎていく
女はいまだ俺の存在に気づいていないらしい
フルフルと頭を揺らしてまるで何かを探しているような動作を取る
やっとのことで俺ら気づいたらしく女は動きを止めた
まるで意外だと驚くように
そして、嬉しさを抑えきれないといった表情になった
冷めた瞳がだんだんと鮮やかな色に変化していく
女は心底純粋に嬉しそうな顔をしてカタンと音を立てながら走ってきた
「如月シオン!!」
なぜか「シオン」の部分だけ発音がおかしい
でも、なぜか聞きなれているような
不思議な感覚に襲われた
そのまま女は俺に向かってダイブしてきた
ひどく残念なことに女の足が見事なまでに鳩尾にクリーンヒットした
もう、呻き声を上げながら倒れる以外の選択肢など無い
俺は体のなすがまま、蹴られた部分を押さえ、思う存分転げまわりながらうめき声を上げた
「シオン!シオン!やっと会えました!これでやっと…」
いまだ鳩尾近くを擦ってはいたがだいぶ落ち着いた
起き上がって女に顔を向けた
なぜか女は俺の名前を連呼して、
そして、酷く嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして泣き始めた
もう意味がわからない
だが女は泣きながらでも芯の通る声で言葉を発した
「これでやっと…シオンとの契約が果たせます」
「契約?」
何の事だかさっぱりわからない
女はただ「はい」と返事をした
まだ涙は頬を伝っていたものの、嗚咽を漏らすことも無く
ただ涙を流しているだけだった
もちろん場所は変わったりしない
駅前の通学路近く
通勤や通学の人々が物珍しそうに俺達をジロジロと嘗め回す様に見た
さすがにこのままの状況はまずい
そう思って俺は女の腕をつかんで近くの喫茶店に入った
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あとがき
女登場!
名前が出てないけど←
相変わらずチマチマ書いています
楽しいなぁと自己満足中(笑
読んでくださってありがとうございます