大好きな気持ち
年が一緒で、家が隣で、気が合って、誰よりも長い時間一緒にいた。
だから好きになるのなんて時間の問題だった。
なのに、どうして神様は僕たちを同じ男に生んじゃったんだろう。
今僕たちが感じている気持ちは周りにいる恋人と同じなのに。
どうして男同士だからという理由で軽蔑され、非難され、苦しまなければならないんだろう。
隣で歩く恋人の陸を見上げる。
僕の視線に気付くと、陸はにっこり微笑んでくれる。
僕たちは付き合っていて、お互いが好きなのにこうやってただ隣で歩くしか出来ない。
腕を組むことも、ましてや手を繋ぐことさえ出来ない。
周りから見てもただの友人と変わらない・・・
「優、何考えてるの?」
陸は微笑みながら僕に尋ねる。
「え、なんで分かったの?」
「そりゃ分かるよ。優は考え事すると眉間にシワを寄せるから。」
そう言って僕の眉間を人差し指で軽くつついた。
「何か悩みがあるんだったら相談にのるよ?それとも、俺じゃ頼りない?」
僕は慌てて首を振った。
それを見て陸はクス、と笑った。
「じゃ、話してよ。まぁ聞かなくてもなんとなく分かる気もするけど。」
「え?分かるの?」
「なんとなく、だけど。もしかして俺たちが恋人なのはどうして許されないことなんだろうとか思ってない?」
僕は驚いた。そんなことまで分かっちゃうなんて思ってなかったから。
僕が頷くと、陸は誇らしげに胸を張った。
「この調子なら優と話さなくても優の考えてること全部分かっちゃうようになっちゃうかもね。」
陸は本当に楽しそうに、それでいてとても嬉しそうに微笑んだ。
僕もそんな陸につられて悩みなんて忘れて一緒に笑った。
「大丈夫だよ。」
だから突然そう言われてちょっと驚いた。
一瞬なにが?なんて聞き返してしまいそうだった。
「優はどう思うか分からないけど。俺は誰に許されなくても、誰に認められなくても、それでいいと思ってる。」
僕は少し不安そうな顔をしていたのかもしれない。
陸は僕を安心させるかのように微笑んだ。
「だって、俺が優を好きなことには変わりないから。」
僕は言われた内容を理解するのに少し時間がかかったけれど、分かった瞬間すごく嬉しくて、口から言葉が出なかった。
「・・・僕も、好きだよ。」
やっと出てきたのがその一言だった。
でも陸は嬉しそうに微笑んで僕を見つめてた。
「それに・・・」
そう言うと、陸はなんでもないように僕の唇にそっとキスをした。
顔を真っ赤にして口を押さえる僕に、陸はいたずらっぽくウインクをした。
「男同士だからってこういうのしちゃダメってことないんだし。普通の恋人と何も変わらないよ。」
そして陸は僕の手を握って歩き出した。
僕は難しく考え過ぎていたのかもしれない。
確かに男同士の恋人は誰にも認められない存在だけど、僕たちが愛し合うことにはなにも関係がない。
好きだったら手を繋ぐことも、抱きしめあうことも、キスをすることだって出来るんだ。
僕が陸を好きだっていう気持ちも、陸が俺を好きだって気持ちも変わらないんだ。
「陸。」
「ん?どうしたの、優?」
優しく僕の声に耳を傾けてくれる陸。
僕は陸に微笑んだ。
「陸、大好きだよ。」