祭り。
名前があるとかないとか。
鬼がいる。
人の心に鬼がいる。
この世の向こうであの世の手前。
「よってらっしゃい、みてらっしゃい
お嬢ちゃん、世にも珍しい金色の鼠だよ」
的屋のおじさんが言ってることは良く分からなかった。
鼠を金色にする真理も
ニヤつくおじさんの心裏も
私にはよくわからなかった。
お祭りに来た人はみんな仮装行列のようだった。
何かよくわからないものが
色んなもので正体を隠して
行列をなしているみたいだった。
私にはその正体がよく分からなかった。
小さい頃母親が読んだ本に出てきた
鬼というあの恐ろしい生き物は
ああいうものなんじゃないかと思った。
私にはその言い知れぬ気持ちも
よく、
わからなかった。