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bon voyage

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果てしない空が世界に反射する。眼下には水面。どこまでも深く、空よりも終わりなど感じさせない水底に青く白く、光だけが差し込む。
座っているのは人工物だとはとても信じられない大きさの、四角いかたまり。かつてはこの中で人が生活していたという。今では半分以上が水に浸かり、ただ朽ちるのを待っている。
 この辺り一帯は主要都市だったと、いまの子供たちは知識だけで知っているけれど、実際に資料は何も残っていないので、みんなそれが何を示すのかよくわかっていない。
ただ、植物に覆われ、水に体を横たえるそれらを、ぼくはとても美しく思う。まるでこうなるために作られたような、そんな気がして。
見なれた景色の中で毎日この時間が、ぼくは一番好きだ。昔の人は夕暮れを「逢魔時」と呼んだと教わったが、僕はこの時間こそまさに魔と出会う時間だと思う。
 明け方。
太陽が顔を出し始めてからの数分。
海に沈んだ歴史の上で、僕は彼にであったのだ。

 彼は自分を、全知だといった。全能だといった。
そして名乗った。



「おれはダタ。世界を再起動させにきた」
作品名:bon voyage 作家名:めぐる