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真夏の凍死殺人事件

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 トントンとドアからノックの音がする。
ジャンは机の下に隠れるとひっそりと息を潜めた。
事務所内はとても暑い。今にも熱中症になりそうな暑さだ。
「今月の水道代が未払いです!いい加減払ってください」
ジャンは今年で25歳の私立探偵だ。
顔はかなり良く、イケメンなのだが……
「そろそろ払ってくれないと止めますよ?!」
(早く帰ってくれ!!!)
……非常に貧乏なのだ。水道代は4ヶ月滞納、ガスはすでに止められ、電気代を払うので精一杯の生活。
水道局員が帰った後ジャンは呟く
「どうしてこうなった?」
その時事務所のドアが開いた。
「ジョアンナ!元はと言えばお前のドジのせいで!俺の!人生は!狂ってしまったんだ」
ドアから出てきた少女は体を震わせて、ジャンを見る。
「先生……わざとじゃないんです。」
「いーやわざとだ。昨日お前がいくつカップを割ったと思ってるんだ?7つだぞ!7つ!。」
ジョアンナは目を潤ませながらジャンを見る。
が、ジャンは近くにあった鉛筆をぽきりと折ると、非常に怖い顔をしてジョアンナへの説教を始めた。
約2時間後
いつもは皿を割る音しかしないこの事務所に電話がかかってきた。
「もしもし。こちらジャン私立探偵事務所。」
「あっ、兄さん。」電話をかけてきたのは、ジャンの双子の弟ドラッツェだった。
「で、何のよう?俺、今すごく忙しいんだけど、……主に割れた食器の片付けで。」
「実は、兄さんに捜査をしてもらいたいんだ。
「お前……警察だろう?そんなんでどうすんのよ?仮にも警部だろうが。」
彼はとても頭のキレている。推理力と知識を武器に警部にまで上り詰めたエリートだった。
「正直言って兄さんにはかなわないよ。」
「褒めるな。仕事なら行くが……。」
「とにかく今すぐ大統領官邸に!」
電話を切られジャンは行くことにした。お金もないので徒歩で行く……こんなに暑いのに。愛用のトレンチコートとキャップを被り、
「ジョアンナ!行くぞ!」
と声をかけ、ジャンは急ぎ足で出発した。
 *
大統領官邸についたジャン達は、ドレッツエに何が起きたのか聞くことにした。
「何があったのか教えてくれ……ぜぇぜぇ」
「大統領が……凍死した」
「凍死?この真夏にか?ゼェゼェ……」
「そうなんだ。どうゆう理由か分からないけど、鑑識が凍死だと言っているんだ。死後12時間後発見された。死体は自室のベッドの上に……兄さん大丈夫?」
「問題ない……続けてくれ。」
第一発見者はメイド。朝食を届けに来たときに発見。すぐに警察を呼んだらしい。死亡時刻は午後10時。警備兵は何も不審な人物は見ていないため、内部の人間の犯行だと断定された。
「じゃあ、見て来る。暑ぅ」
早速死亡現場へと走っていくジャン。それをジョアンナが追いかけるが、転んでしまった。

「特にここには何も無いなぁ。」
「先生!テラスですよ!テラス!」
「あ~ハイハイ行きますよ。」
すごくいやな顔してジャンはテラスに移動する。
「ん?」
ジャンが見た柱には何か……引っ掛けた痕のような物が残っていた。
「先生?どうしたんです?」
ジョアンナが心配そうに近づいてくる。
「いやなんでもない」
ジャンは笑いながら、テラスへと向かった。

ジョアンナはテラスにあったハンモックに乗って寝転がる。
「おい!おまっ……」
「良いんです。さっき執事さんに良いって言われました。」
こんな殺害現場でよくもまぁ楽しくしてられるものだと感心しながら、ジャンはふと気付いた。
(あのハンモック……僅かだが濡れている。)
ジャンがそんなことを思っている間に、真っ赤な夕日は地平線に沈んでいった。

「警察の方々、またその他の方々もお疲れでしょうから、お食事をご用意いたしました。召し上がってください」
と執事のツェッペリが言った後、メイドたちが料理を運ぶ。食堂は静かになると思えた。大統領が、死んだのだ。
しかし、食卓は静かに……ならなかった。
ガツガツガツ
「久々のちゃんとした飯だ!」
「先生!おいしいです!。」
食堂に二つ大きなの音。
ジャンとジョアンナだった。
「一週間ぶりのパン!肉!スープ!」
「こんなにおいしいパンは初めて!」
ドラッツェは頭を抱えて、それからジャンとジョアンナを引きずって食堂から出た。
「兄さん達!人が一人死んでるんですよ!なんでそんなに楽しそうにがっつくんですか?弟としてとても恥ずかしいですよ!」
「「だっておいしいじゃん。」」
思わずジャンとジョアンナは声を合わせて言った。仕方ないのだ。うまいのだから。
「……ハァ」
ドラッツェは溜息を吐くと食堂へと戻っていった。

「いやぁ、食った食った。」
ジャンがテラスに戻ると、一人の少女が居た。目には涙を浮かべ、今にも崩れ落ちそうな顔だった。
「お嬢さん?どういたしましたか?」
「父が死んだことがショックで……」
「するとあなたが被害者の娘さん。テレサ・クラインさんですか。」
「はい……。あなたは、どなたですか?」
ジャンは前髪を少しいじると、
「通りすがりの探偵。ジャン・クシュリナーダと申します。」
と丁寧にご挨拶する。下心見え見えである。
「まぁ。なら父を殺した犯人を、見つけ出してくださいね?」
「もちろんですとも。……月が綺麗ですね。」
「えぇ……」

ジャンはベッドの上で起きた。
だが、体が動かない。暑いからといって、クーラーをつけて寝たのがいけない。体の体温を奪われ動けなくなるのだ。
(待てよ……?もしかしたら……)
ジャンは無理矢理体を起こすと、メイドたちにあることを聞き始めた。

「へぇ、テレサさんは不眠症なんだ。」
「えぇ。ですからいつも就寝の時は、睡眠薬を飲むんです。」

「扇風機ですか?それならテラスに巨大なファンがありますけど。」
「ありがとよ!」

「犯行方法と犯人が分かった!?兄さんそれ本当?!」
「はい!皆さん!無能な警部はほっといて、犯行方法を説明します。犯人は、まず大統領に睡眠薬を飲ませました。方法は不明です。多分水にでも溶かしたんでしょう。そして、薬が溶けきったころには被害者は眠っています。そこに、水をバシャッとかけるんです。」
「先生。それじゃあ、凍死になりません。」
「話は終わっちゃいない。さて、その体をハンモックに乗せます。もしくは、本人がそこで眠ったのかもしれない。そして、ちょうど、そこにはファンの風が当たるんです。ファンの風にあおられて、気化熱で体の体温は下がり、凍死する。犯人は、被害者を荷台に乗せて、部屋まで運べばいいんです。……証拠に部屋の柱に、そのときの傷、ハンモックの湿り気がその証拠です。今やらせてますが、多分血液から睡眠薬の成分が出るでしょう。犯人はあなたですね?テレサさん。」
ジャンはテレサに向かって、指を突きつける。「負けました……。でもどうして私だと……」
「条件に合う人があなたぐらいしかいないからです。睡眠薬を使うのはあなたぐらいですから。」
「父が憎かった!金しか頭にない父が!」
こうして事件の幕は下りた。

「ドラッツェ!報酬なしってどういうことだよ!」
ジャンは大声でドラッツェにまくし立てる。
ドラッツェは笑いながら、
作品名:真夏の凍死殺人事件 作家名:夢轍