昨日と云う日が土曜日だったらいいのに
どうもダメだ。
長い休みに入ると曜日の感覚が薄くなってしまう。
殆ど外に出ることがない私は特に。
まぁそんなことより、明日は快晴のようだ。
しかも気温もこの月にしては4℃以上高いらしい。
少なくても携帯の天気予報にはそう記されていた。
無性に出掛けたくなった。
自転車で遠出したくなったのだ。
さっそくネットを駆使して、何処に行くのかを決める。
博物館、美術館、神社仏閣、レジャー施設、公園・・・
色々と迷ってしまったが、結局水族館に行くことにした。
私の住んでいる県は内陸で、海との関係は希薄だ。
そんな所の水族館に興味を惹かれた。
ただそれだけの理由だった。
明日に備え、もう寝ることにしよう・・・
次の日の朝。
特に何を準備するわけでもなく、軽装備で玄関を出た。
自転車にまたがる。
まだ若干寒い。
しかし、昼頃には今の気温の2倍は暖かくなることだろう。
私はペダルを漕ぎ始めた。
なんと遠いことだろうか。
それとも私の体力が衰えたのか、はたまたこのカゴ付き自転車が悪いのか・・・
とにかく疲労感が半端ではなかった。
目的地はまだなのか。
勘弁してくれ、帰りもあるのに。
そう思ったのもつかの間で。
後はまさに無心でペダルを漕いだのだ。
たかが30?の道のりを、漕ぎ続けたのだった。
見えた。
目視できた。
あれだ。
嗚呼、やっと到着することが出来た。
感動云々と云うより、とにかく達成感。
駐輪場を探す。
日曜日だと云うのに駐車場にはなんだか車が少ない気がした。
あまり人気のない水族館なのだろうか。
まぁ確かにパッと見て、なんだか古びていて想像していたよりも小さい。
人気が出ないことに納得してしまうような外観。
でも私はそんなことに興味はなかった。
自分の目的を達成することにしか興味はなかったのだ。
とにかく水族館に入ることにする。
・・・?
ここで初めて違和感に気がつく。
人の気配がしない。
いや、人と云っても従業員の方だ。
自動ドアの前に立っても開かない。
心の中がざわめいた。
まさか、まさか・・・
別の所に視線を向けると、小さな看板を発見することが出来た。
「本日休館」
馬鹿な。
今日は日曜日のはずなのに・・・臨時休館なのだろうか。
携帯電話を開く。
「○月×日(月)」
・・・・・・!!!
休館日、毎週月曜日。
調べたとき、確かにそう記されていたことを覚えている。
嗚呼、そう云うことだったのか。
嗚呼。
思わず呟いた。
「昨日と云う日が土曜日だったらいいのに」
END
作品名:昨日と云う日が土曜日だったらいいのに 作家名:ヒモス