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表と裏の狭間には 二十話―内乱勃発―

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「…………あんたが、桜沢美雪ね。」
「ええそうですわ。お初にお目にかかりますわね、楓ゆりさん。」
「まさかこうも堂々と誘拐してくるとはね。大胆じゃない。」
「でしょう?意表を突くのにも苦労いたしますのよ?」
「ふん。で?あたし一人を誘拐した程度で、あなたたちが独立できるとでも思っているのかしら?」
「十中八九可能だと思っておりますわ。あなたが死ねば、アークは即崩壊する手はずなのでしょう?あなたの人脈は調べさせてもらいましたの。そこから辿れば、計画くらい割れますわ。」
「そう。でも、あたしが死ねば、あなたたちも終わりよね。つまり、あなたたちもあたしを殺す事は出来ない。逆説、アークが独立を認める理由も無い。」
「そう思うでしょう?だから、もう一つ仕掛けを用意させて頂きましたの。アークは、一般人を巻き込むことを、極端に避けているのでしょう?ほら、御覧なさい?あの一般人が、わたくしたちの内乱の影響で死んだりしたら、上はどう思うでしょうねぇ?」
「……………んなっ!?貴様……何てことを!?」
「おーっほっほっほっほ。絶望なさい。あなたがお父様を殺す事は叶わない。それに、家族を守ることも出来ない。あなたは、何一つ目的を果たすことが出来ずに死んでゆくのですわ!」

「………そういえば、ゆりはどこに行ったんすか?」
「ゆり?さっき図書館へ行くって言ってたが?」
放課後、オレとゆりは関東支部の拠点に向かっていたのだが、ゆりは道中で『あたし、図書館へ行くから、先に行ってて』と言ってたから、図書館に向かったはずだ。
オレたち六人は、主無き支部長室で、いつも通り紅茶を飲んでゆったりくつろいでいる。
「さーて、ポーカーでもやるかい?」
「テメェは何を賭けるつもりだ何を……。」
「勿論ストリ――」
「お前ちょっと黙れ。な?」
「……言わせない。」
「ねえ、何でわっちは両脇から銃口を突きつけられてるのかな?」
気付くと、紫苑と礼慈が、理子の両脇から銃を突きつけて黙らせていた。
「お前ら………。暴発したらどうすんだよ。洒落になんねぇぞ。」
「いや、安全装置外してないし。」
「……そもそも弾を籠めていません。」
こいつら…………。

「それで?あんたたちはクーデターなんか引き起こして、どうしようって言うのかしら?」
「あらあら。そこまで分かっているんですの?」
「ええ。あんたの『お父様』率いる連合組織『神議会』と、あなたが率いる新組織……今はまだ構想段階の『ノヴァ』で、現体制を打倒するんでしょう?」
「そこまで分かっていらっしゃるとは驚きですわ。もっとも、後ほんの数時間で、構想ではなくなるのですわ。」
「でしょうね………。こんな大それたことまでしてね。」
「少しは落ち着かれましたかしら?」
「ええ……。でも、あんたを惨殺するのは確定したわ。」
「恐いですわね。」
「それで?あなたの計画に欠かせないはずの、『お父様』はどこにいるのかしら?」
「それでしたら、部屋の外に居りましてよ?わたくしの護衛をしてくださっているの。なんでしたら呼んで差し上げましょうか?」

「図書館に行った、にしては、遅いと思わないかい?」
「……確かに。」
理子の言うことにも一理あった。
確かに、遅すぎる。
携帯にも繋がらないしな。
「煌、ゆりに何かあった、ってことはないのか?」
「………まさか。ゆりに限って滅多な事は無いと思うが………。」
「でも、今は非常事態なの……。」
「だよなぁ………。」
もう一回、携帯に電話してみるか。
『おかけになった電話番号は――』
「チッ、やっぱり出ねぇな……。」
「捜索隊を出すっすか?」
「いや………、もう少し待ってみよう。何も無いかもしれないし。」
「…………。」
全員が何か言いたげだが、やはり待ってみることにしよう。
あいつが、そう簡単に誘拐されるなんてこともないだろうしな。

「やあ、お嬢ちゃん。久しぶりだね。元気だったかい?」
「霧崎……………平志………………ッ!!」
「おっと、そう睨むなよ。」
「………ハン、あんたたちがクーデターを引き起こして、どうなると思ってんの?今の世論は暴力団には否定的よ?」
「どうでもいい問題だな。世論がいかに反社会組織に対して否定的であろうと、現在の政界は社会の暗部と密接に癒着しているじゃないか。下々がどう言おうと、お上は自分の都合のいいようにやるのさ。」
「そのお上を打倒しちゃったら、後ろ盾が無くなるんじゃない?」
「我々そのものが後ろ盾となればいいのさ。」
「へぇ?ひょっとして暴力団とかを日本のトップに置くつもり?次はマフィアと癒着?最終的にはテロリストの拠点国家でも目指してるのかしら?」
「俺が上にいる限り、そんなことにはならんさ。」
「ええ、そうね。認めるわ。あなたは最高の人間よ。あなたが関わってきた全ての犯罪は、非合法でも、国家のためになることばかりだったものね。どちらかと言えばあたしたち寄りね。」
「ほう、分かってるじゃないか。」
「でも、その一方で、あなたは数多の犯罪を誘発してきた。これも事実よね。それに、あなたを最高の人間だと言ったのは、客観的に見たからよ。主観的に見れば、あなたは、最低の人間だわ。」
「随分評価が落ちるな。」
「当たり前でしょう?あなたは……あたしの両親を殺したのよ。」
「何だ。ただの私怨じゃないか。」
「私怨で十分よ、こんなもの。」
「俺よりも、お前のほうがずっと犯罪者っぽいよな。」
「自覚はあるわ。それに、あたしがこれからする事は、国家のためになるという確信もあるわ。」
「これからすること?なんだい?」
「テメェを殺すことだよ、クソ野郎。」
「おお、恐い恐い。」
「…………。」
「東京都で条例が施行されるってね。でも、俺から言わせてもらえるなら、無駄だと思うぜ、あれ。」
「へぇ?」
「『この世に悪の栄えた試しなし』とは言うけれど、俺的には、『この世に悪の滅んだ試しなし』と提言したいね。」
「言いたい放題言うわね。」
「ああ、言うさ。悪を淘汰するのは可能だ。だが悪を滅ぼす事は出来ない。『暴力団』という悪をいくら迫害し、攻撃し、淘汰しようとも、それは形を変えて再生する。悪は柔軟だ。例えどんな逆風に晒されようとも、形を変え、適応して更に蔓延る。そうだろう?」
「ええ、そうね。お陰であたしたちも苦労してるわよ。」
「お前たちのアークだってそうだろう。善に刃向かう悪が、悪を淘汰する悪に転じただけの話だ。お前らは善行など何一つしていない。しているのは、ただ人を殺すという悪行だけだ。」
「そんな事は前提条件よ。あたしが人殺し?今更何を言っているのかしら?」
「なんだ、分かっていたのか。」