ブレスレット
ずっと頭の中で警鐘が鳴り続けるように、ずっとそのひとの存在が心に引っかかっていたのだ。
それは単なる嫉妬だと言われたらそうなのかもしれない。
けれどそういう燃えるような憎しみではなく、静かに続く疑問のような感覚だった。
だから彼とそのひとが結婚すると聞いても、別段大きな驚きはなかった。それはそうだなだと思っていた。
けれど…その瞬間に疑問は確実に嫉妬に変わった。
いくら許せないと思っても、もうその結果が覆る事はないのに、私は笑顔の底で、彼女に対する憎しみを育てて行った。
2人が結婚しても、彼らは指輪をつけていなかった。
けれど見付けてしまったのだ。お揃いのブレスレットをつけているのを。
それは結婚を隠しているくせに、指輪よりも生々しかった。
誰も気付いていないと思っているでしょう?でも私を騙す事はできないのよ。
知ってるんだから。