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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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三日月が見ていた話

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今年もまた、桜の季節がやってきました。
川のそばの大きな桜の木は、枝いっぱいに花を咲かせています。
三日月はうれしくて、にっこりしました。
しばらくうっとりとながめて、ゆっくりと西に傾いたとき、三日月は、眼をぱちくりさせました。桜の木の下に小さな小さな動くものを見つけたからです。
それは子猫でした。
捨てられたのでしょうか。子猫はもそもそと草の中からはい出して、心細そうに泣きました。
「みゃおう」
「どうしたの?」
「なにをないてるの?」
桜の花たちが子猫に話しかけました。
「みゃうぅ」
子猫は小さな声で泣くばかりです。
三日月は、自分は何もしてやれないことにやきもきしています。
すると、風もないのに桜の木がふるふると身体をゆすりました。
さわさわさわ……。
ゆすられて、花びらたちは落ちていきます。
「散るのはまだはやいけど」
「子猫ちゃん、いっしょに遊びましょう」
ひらひらひら……
花びらたちは落ちながら、くるくる回って踊ります。
子猫はじっと花びらを見つめながら、大きな目を動かします。
くるくるくる……
花びらの踊りが楽しくて、子猫は泣くのをやめました。
そして、花びらといっしょに踊り始めました。
一枚の花びらが子猫の鼻にくっつきました。
「へっくしゅ」
子猫は小さなくしゃみをしました。
それから、また子猫は花びらたちと楽しく遊びました。
三日月は安心して、山の向こうに沈んでいきました。
踊り疲れた子猫は、桜の木の下にうずくまりました。
花びらたちが集まって、ふんわりと子猫を覆いました。
子猫はすやすや眠ります。
あったかい桜のおふとんにくるまって……(^-^)