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宮のお産

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昔々のお話です。


お空の声を聞く民族のお姫様・・・・・
お空でお話をするのが代々のお仕事であり、それが生まれたときから授かった技であるお姫様がおりました。

姫様は様々な苦行にも耐え、結婚の時を迎えました。

お相手は・・・・・、そうそうあの方です。
幼い頃から大好きだったあの方。



その方と姫様との結婚の儀は粛々と行われました。

世間では野望が渦巻く、危険な時代でした。


それでも、姫様は幸せな結婚生活に入りました。
幸福な時間は足早に流れ、いつしか姫様はお腹の張りを覚えました。
妊娠したのかな・・・・・夫婦は喜びました。

お医者様に体を診てもらうようにと母上様から言われました。

しかしその頃の世の中、姫様の体をよく知る代々のお医者様はもう皆殺されておりました。
けれど姫様は勇気を持って、隣の国のお医者様に診てもらうことにしました。

そのお医者様は優れた機械をお持ちでした。
お腹の中が見える機械です。

その機械で姫様のお腹の中を見てみると、子宮の中に1cm位の透き通った白い珠が見つかりました。
はてさてこれはなんなのでしょう。
民族の医者ではないその医者にはさっぱり分かりません。
それで調べてみたくなり、医者はその白い珠を姫様のお腹の中からとりだしてしまいました。


実はその珠は、民族の姫様の妊娠を表すお子の大事な命なのでした。


その後、姫様のお腹はぺちゃんこになり、子供は流れてしまいました・・・・・。

あぁ、なんということを。
母上も姫様夫婦も嘆きました。





それからまた、時は流れて数年後、姫様は又お腹の張りを感じました。

今度は前回とは違う、もっと強い張りです。

二度と失敗を繰り返してはいけないと、この度は反対隣の国の医者に診てもらうことにいたしました。
優れた機械も隣の国から又借りてきました。


医者は恐る恐る姫様のお腹を覗きました。
すると今度は、子宮全体にボヨボヨの大きな水の輪の袋が出来ておりました。

この医者もそれが何を意味するものなのか、さっぱり分かりません。

医者はその水の袋を棒でクルクルと何回もかき混ぜてしまいました。
水の輪は壊れてしまいました。


この水の袋の中にも大事な命が授かっていたのでした。
御影の子という、これも又民族の大事な赤子の出来方でした。


その後、姫様のお腹はぺちゃんこになりました。
子供はまたしても流れてしまったのでした。



時は流れました。

3度目、姫様はまたお腹の強い張りを感じました。
今度こそは何処の国の医者に頼むことなく、自分の力で生んでみようと決心しました。

数日後、薄いピンク色の少量の出血がありました。

妊娠のおしるしでした。

お腹の中には、あの白い珠がいくつもザクザクと増えてくるような感じがしました。

家の中で静かに休んでいる日々が続きました。

けれどその間に、何処の国からの霊なのでしょうか。
お腹に悪霊がまとわりつくようになってしまいました。

姫様は憂鬱な時を過ごしました。
その後、大量の出血があり、またしてもお子は流れてしまいました。



姫様夫婦は話し合いました。

何回にもわたって子が流れてしまう、これも神様のご意志かもしれない。
お子はあきらめても良い。
二人幸せに生きていけるならばそれで良いではないか。


その時、姫様のお腹に残っていたあの白い珠のいくつかが、夫のお腹に移り入りました。
夫のお腹に入った珠は、夫婦の愛を発し始めました。
一つは緑色に光っています。

夫婦は泣きました。
これで良い、これで良いと。



その頃、京の都では突然お腹がふくれて病院に駆け込む人たちであふれました。
その人たちは次々と可愛らしい赤ちゃんを産んでいきました。


姫様夫婦の残りわずかな命の珠から出来た、御霊(みたま)の子でした。



姫様夫婦は、お空でその赤子たちの声を聞くことが出来ました。


この国のどこかで私たちの子が生きるのです。




姫様は、又お空でお話をします。

お子たちに声が届きますように。

民族の民が繁栄しますようにと願いながら。
作品名:宮のお産 作家名:シエラ