海竜王 霆雷 発熱2
挨拶というのは、そういうもの、というのが雷小僧の認識だ。手を挙げて、よお、というのだから、失礼極まりない。
「・・・なんとも不遜な・・・わしに、その無礼は万死に値するぞ。」
「はあ? 親父が、カメジジイには、普通に喋れって言ったんだ。たから、これで俺の普通だ。」
「おまえの普通は、銀竜よりも性質が悪い。」
「うるせぇーな。親父より、俺のほうが楽しいって言ってんじゃんかよ。それよりさ、この間、行きそびれたカメジジイの住処に案内してくれよ。俺も、そこに行って見たい。」
「ふん、付いて来られるなら付いて来い。付いて来られねば、おまえは大地の重みで圧死じゃ。」
「へんっっ、吹かしてんじゃねぇーぞ。・・・せんせー、これ、親父のクスリだってさ。ほら、行こうぜ? カメジジイ。」
親子二代続けて、それか? と、叙玉は呆れているが、玄武の長は、そっと深雪の頬を撫でると、「おまえなど叩きのめしてくれるわ、黒雷竜。」 と、すっと姿を消す。「やれるもんならやってみろよ。」 と、小竜も売り言葉に買い言葉で姿を消す。
「・・・深雪・・・俺は、おまえが二人になると疲れるんだがな? 」
眠っている深雪に、叙玉も声をかけて頬を撫でる。部屋の片隅に陣取っている沢は、肩を震わせているが、何も言わない。ほぼ、今の遣り取りは、深雪と玄武の長の間ても交わされている日常会話だからだ。
作品名:海竜王 霆雷 発熱2 作家名:篠義