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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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非色──いろにあらず──

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悲色(ひいろ)──雪の日の幻想──



   part1

――晴れ ときどき 曇り

夕べの予報
NHKでもはずれる天気
遠くの音がはっきり聞こえる日は
天気が悪くなるという

きまぐれはニンゲンだけではないんだね

目が覚めたら雪が降っていた
窓のそと
聞こえるはずのない列車の音が響く

Ahhhhhhhhhhh……

また ふとんにもぐりこもうか
たいくつだよ
だれか電話で話そうよ

    part2

とざされたくちびるは
何をも語ろうとしない

かたくとじた貝殻のように
おまえは なぜ そんなにも
過去にしがみついているのだ

じっと 岩の間にいる
やぶにらみで 神経質な蟹のように

いったいだれがおまえを呼ぶというのだ

     part3

見えないものを追うんじゃないよ
追ってどうなる
しまいには身を滅ぼすだけだよ

風をさがすのは およし
むだなことだよ

手応えのないものは
いつになっても つかまらないよ

夢にも形があるのは 知っているけど

     part4
ゆきぐにでは いろりをかこんで
むかし むかしの おはなしを するのでしょうか

まっしろに うずめられた さとの
たのしみは
とうさんからの たよりでしょうか

ちいさなむらの わらべうたは
もう 
きこえませんか……?

    part6


おまえは時の歪みの中に
取り残されているのだ

ちぎれた耳は いったい
何を きいたのだろう

砂の上を 足跡が歩いていく音
ああ
心臓がこわれそうだ

うつろな目は 何を見たというのだ
大粒の涙を流して

しかし 決して悲しくはないのだ

わからない

流れ星が海に落ちて
金色のひとでになったなんていう話は
むかし話にさえ ありはしない

そんなことを信じる少女趣味はよせ

優しさも美しさも
この世の嘘の前では すべて
色褪せてしまうのだから

    part7

わたしは狂っているのではない

狂っているのは世界だ

闇の中から ひそやかな
悪魔のささやきさえ 聞こえてきそうだ

草な陰で待ちかまえている毒蛇は
おまえの足下に跪くだろうか
それとも
おまえののど笛をかみ切るだろうか

おまえは
ゆうべの子守歌も
ものがたりも
みんな忘れてしまって
草の上をかけまわってごらん
ああ 美しいよ
きっと 死ぬだろうから

少し 笑ってごらん
花びらがこぼれるように

はかないものはみんな美しいさ

しあわせだろう おまえは
笑って死ねるなんて

    part8

――県南部に降り続いている雪は
今夜半にはやむでしょう

手紙でも書こうか 遠くの人に
今年の冬は いかがお過ごしですか?
こちらは 珍しく雪が降っています