デブ、宙を舞う
そんなある日の体育の授業中、ジェシカはいつものように俺に絡んできた。
「おい、デブ!お前逆上がりできないだろ!!」
「おでが逆上がりできるように見えるか?」
俺は皮肉とありあまるぜい肉を込めて尋ね返した。
「見えん。だって、その三段腹がひっかかって……あはははは!! Ahahahahaha!!」
ジェシカは腹を抱えて笑い出した。
「おでだって少し練習ずればずぐにでぎるようになるさ。今までやらながっただげでやればできるさ!!」
俺は二の腕を上下に振り動かしながら言った。
「くくくく……」
俺の二ノ腕のゆれを見てジェシカは再び笑いをこらえるように腹を抱えた。
「笑うな!!コンヂクショウ!!絶対に出来るんだぞ!!」
俺は先ほどより強い口調で両腕の肉を揺らせながら言った。
「そこまで言うなら賭けようか?もし、あんたが逆上がりできなかったら……そうねぇ、全裸で裸踊りしてもらうわ。しかも全校生徒の前で」
俺の怒り、そして肉のゆれは静まることはなく、思わず
「いいだろう。そのかけ乗っだ!!」
と言ってしまったのだ。
「裸踊りだよ? ほんとにいいの?」
ジェシカの確認によって俺は少し冷静になった。俺に逆上がりなんか出来るわけがない。ということは必然的に、俺は全校生徒の前で裸踊りをしなければいけなくなる。
そんなのはごめんだ。
しかし、あとに引くわけには行かない、男として。
そこで俺は相手に引かせようと考えて相手に何か条件をつけさせることを思いついた。
「じゃあもじ、おでが逆上がりに成功したらおめぇは罰ゲームだかんな!!」
「いいよ、だって私負けないもん。」
ジェシカは強気な態度で言ってきた。どうやら向こうも引く気はないらしい。
「じゃあ、もしあんたが逆上がりできたらキスしてあげる」
かくして俺は逆上がりに挑戦するはめになってしまったのだ。
「期限は3週間後の文化祭までね。文化祭の日に逆上がりができなければそのまま文化祭のステージで裸踊りしてもらうから。もし、逆上がりできたら全校生徒の目の前でキスしてあげる」
そう言うとジェシカは俺の三段腹の二段目をギュッと強く握り、「ホゲェー!!」と痛がる俺を見て、ニヤッと笑いながら去っていった。
あのときのムカつく笑顔は今でも俺の脳裏に焼きついて離れない。