ちょっと弟が好きなだけ!~浩樹~
この日をどんなに待ち望んでいたことかっ!!
もちろん、ずっとお小遣いを貯めてきた。
荷物持ちは弟の浩樹(ひろき)、
若干…なんてもんじゃなく、すこぶるやる気がない。
別に良いけどね。
私の期待通りのこの空間は見たいものだらけで…
それに痺れを切らした浩樹がうんざりした声で問う。
「あとどのくらいで見終わるの?」
「ん~…も~すこし~…」
「その台詞5回目なんだけど?」
「ん~…」
お小遣いは貯めてきたけど、無駄遣いはしたくない!
厳選に厳選を重ねた結果、買ったのはたったの1品で;
荷物持ちまで用意したのに意外な結末を迎えた。
遅くなった昼食を終えた帰り道、
緊張がすっかり解けて踵の痛みに気づく。
今日のために用意した新しい靴で靴擦れしたようだ;
一度気がついてしまうと痛みが我慢できなくて
浩樹との距離が少しずつ離れていく。
「姉ちゃん…疲れた?」
「え?全然大丈夫だよ。」
「じゃぁ、なんで俺から3歩も離れてんの?」
「べ、別にもぉ家に帰るだけだし、知ってる道だし、
私が先頭じゃなくったって大丈夫でしょっ」
「ちょっと靴脱いで足見せてみ?」
「なんでこんな道のど真ん中で
「いいから」
浩樹が私の足元に屈んで靴を脱がせる。
昔から浩樹の観察力には敵わない。
身長だっていつの間にか抜かされてるし、
今日だって私が誘った用事なのに…
私は『姉』なのに…かっこ悪いなぁ。
「なんで血が出るまで黙ってたの?」
「…帰るだけなんだな~って思ったら
急に気が抜けて、さっき、痛いの気がついた。」
「おんぶしよか?」
「恥ずかしいからヤダ。」
「なら、姫抱っこだな。」
「もっと恥ずかしいからヤダ!
まだまだ全然自分で歩けるんだから!」
「はいはい」
掴まれ、と言わんばかりに腕を差し出してくる。
でも、それをしていいのは私じゃないのに…
私じゃない誰かとそうして歩くんでしょ。
悔しいような、寂しいような…なんでだろう?
こんな感情いらないのに。
「姉ちゃん?戦利品が袋から出して欲しいってさ、
ゆっくり歩くから、早く腕掴まって。」
「…w
戦利品が言うならしょうがないなぁ!
お家までしっかりエスコートなさい☆」
「はいはい」
浩樹の気の利いた言い回しのおかげで
イヤな気分は吹き飛んだw
少しでもこの時間が続くように
遠回りしたいところだけど、そこは我慢。
いつか、浩樹が他の女と腕を組む日が来るように
私にも他の男と腕を組む日が来るのだろうか?
もし、そうだとしてもたぶん大丈夫だ。
だって、腕は2本あるんだから☆
作品名:ちょっと弟が好きなだけ!~浩樹~ 作家名:藤枝 真緒