老い楽(らく)の恋
西村由香は夫、徹の浮気疑惑が確信に変わり暗澹たる想いになった。
しかし、嫉妬心はあまり涌かなかった。
でも浮気したことは絶対許すことは出来ない
それは妻だからか
女としての誇りだからか
まだ愛情のカケラがあるからか
《主婦として妻としてこの20年間、夫や子供達に
尽くして来たご褒美が腐った果実とはあまりにも理不尽過ぎる》
いったい夫婦って何
主婦って何
妻って何
夫婦も長年共に生活していれば人生の垢が溜る
動脈瘤のようにじわじわと大きくなり血管を細め
血液の流れを弱める。
お互いの想いやりの無さ、甘え、不信、疑惑さまざまな
要因が瘤となって血液を止め夫婦愛を壊していく
由香はこの瘤を取り去ろうとは思わない
いや、もう外科的手術は難しいであろう
いつ破裂しても可笑しくない状態なのだ
このまま破裂させぬよう騙し騙し暮して
行くのもいいかも知れない・・・
これから残された夫婦としての人生と
男として女としての人生をお互いが
満足出来る生き方を模索しながら人生を
謳歌すればいいのではないか・・・
由香はそう思えるようになったらもう夫の浮気なんて
どうでもよくなった。
《わたしの人生はわたしだけのもの
これからの人生はわたしが主役で演じるわ》