本のムシ
私の知識が正しければ1日は24時間、
現在住んでいる国での
人間が一日に摂る食事の回数の平均は三食。
一日ぶりに帰ってきた我が家のキッチンには
調理した形跡もなく、冷蔵庫の食料も
全くと言って良いほど減っていない。
つまり、彼は…食事も摂らないまま24時間以上
本を読んでいることになる。
本を取り上げてみる。
とても困った顔をして私を見る。
「もう少しで終わりますから…」
その集中力は大変羨ましいのですが
何事も「やりすぎ」は禁物なのです!
でも、その目で見られると弱いんです;
本を返すとすぐに笑顔になる。
「本当にもう少しですから。」
笑顔は反則。
本のムシの餌は本。
どこにいても本を手放さない。
でも、何をしてても私の心も手放さない。
こんなに器用な人間がいるなんて
彼に会うまで知らなかった。
「あと何秒?」
「秒はちょっと無理ですね…」
「じゃあ、あと何分?」
「あぁ、分もちょっと…」
「…何日かかるの?」
「5日以内には終わらせます。」
「………」
「あれ?どうかしましたか?」
「…~っ全然『ちょっと』じゃないじゃない!!」
「え?え?」
「今、食べないならもう料理なんてしないっ!
一緒に食事もしないからっ!!」
「そ、そんな…;;
待ってくださ~い!今食べますから~!」