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藤枝 真緒
藤枝 真緒
novelistID. 32347
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本のムシ

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本のムシの餌は何?


私の知識が正しければ1日は24時間、
現在住んでいる国での
人間が一日に摂る食事の回数の平均は三食。

一日ぶりに帰ってきた我が家のキッチンには
調理した形跡もなく、冷蔵庫の食料も
全くと言って良いほど減っていない。
つまり、彼は…食事も摂らないまま24時間以上
本を読んでいることになる。


本を取り上げてみる。
とても困った顔をして私を見る。

「もう少しで終わりますから…」

その集中力は大変羨ましいのですが
何事も「やりすぎ」は禁物なのです!

でも、その目で見られると弱いんです;
本を返すとすぐに笑顔になる。

「本当にもう少しですから。」

笑顔は反則。
本のムシの餌は本。

どこにいても本を手放さない。
でも、何をしてても私の心も手放さない。
こんなに器用な人間がいるなんて
彼に会うまで知らなかった。

「あと何秒?」
「秒はちょっと無理ですね…」

「じゃあ、あと何分?」
「あぁ、分もちょっと…」

「…何日かかるの?」
「5日以内には終わらせます。」

「………」
「あれ?どうかしましたか?」

「…~っ全然『ちょっと』じゃないじゃない!!」
「え?え?」

「今、食べないならもう料理なんてしないっ!
 一緒に食事もしないからっ!!」

「そ、そんな…;;
 待ってくださ~い!今食べますから~!」
作品名:本のムシ 作家名:藤枝 真緒