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つくもがみ

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(語り部:エカチェリーナ・ポンパドゥール)





 皆、付喪(つくも)神って知ってるかい? 髪型のことじゃないよ。
 八百万(やおよろず)の神ってなら聞いたことあるかな。付喪神ってのは、日本古来の汎霊説(アニミズム)的な価値観から生まれた妖怪の総称さ。

 長年使い古したモノは魂が宿る……そんなことをじいちゃんやばあちゃんお年寄りなんかから聞いたことはないかい?
 妖怪って聞くとだいたい動物のイメージ? そうだねぇ、でも付喪神は道具などの無機物が変化したもんなんだよ。
 焦げたお釜や欠けた茶碗とか、穴だらけの傘とか、ボロボロになった雑巾とかね。そういうものが、九十九年余りの長い年月をかけて“神さび”――付喪神になるんだ。
 室町時代から江戸時代にかけて盛んに語られたんだが、どうやら現代でもまだあちこちで生き残ってるみたいなんだよ。

 たとえばポケベルだな。
 一時期大流行したけど、携帯電話が普及しちゃった今、そんなものは使われないね。でもコアユーザーだった中には、電波を打ち切られたそれを捨てないで大事に持っているものもいたそうだ。
 使いこなしただけ、愛着も湧くんだろうね。私もその一人だったんだよ。

 それである日、掃除中にそのポケベルが箱の中から出てきてね。
 ああ、懐かしいな――そう思って画面を拭いていると、急に鳴り出して、

<アリガトウ>

 そんな言葉が表示された。
 驚いたよ。だって、もう何年も前のものだし、電池だってとっくに切れてるはずなのに……。たとえかろうじて電池が残っていたとしても、アリガトウというメッセージが表示されているなんて……。
 なんだかポケベルからの最後のメッセージに思えて――とても愛おしくなってしまった。

 そうそう、こんなこともあったよ。
 私は低血圧のくせに朝が早いから、ほぼ毎日目覚まし時計を使っているんだけど……ある朝、いつもの通りベルの音で起き、時計盤を見たらたまげたね。
 時計の針が止まってたんだよ。夜中に電池が切れちゃってたんだ。それなのに、設定した時間にベルがちゃんと鳴った……。
 小さい頃から使いこんだ目覚ましだから、あれも付喪神になっていつも通りの時間に起こしてくれたんじゃないかな……なんて。
 いや、なんにしろありがたいね。

 皆も、そういう経験はあるか?
 ふふ、付喪神は日本の民間信仰だ。しかし、『ものが魂を持つ』という自体は、なにも日本限定だとは言い切れないからね。

<もったいない>
<物を大切に>

 そうしないと、いつか粗大ゴミとして捨てたテレビや冷蔵庫に、追いかけられる羽目になるかも知れないぞ。
作品名:つくもがみ 作家名:狂言巡