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でんでろ3
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novelistID. 23343
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煙突からの手紙

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「2→5,3→4,3@18」

こんな手紙を受け取った。
封筒の表には「としお さま」。つまり、私宛て。
封筒の裏には「えんとつより」。誰だ?
今日は10月30日の日曜日。しっかり休日。
遅く起きて、郵便受けから新聞を取り出すとき、この手紙が落ちてきた。
切手も貼ってなければ、住所も書いてないので、直接、郵便受けに入れられたのは、明らかだ。
何かの、いたずらか?
見覚えのない字。というより、わざと、崩しているのが、ありありとわかる。手掛かりにはならない。
薄気味悪くもあるが、単なるなぞなぞかも知れない。あるいは、家族の誰かの出題か?
ならば、犯人探しの前に、謎を解いておかないと、恰好がつかない。
「これ、どういう意味?」なんて聞くのは、無粋にも程がある。
発案者、出題者が誰であれ、この手紙に妻が係わっているのは間違いないだろう。
2人の娘は、まだ、5歳と3歳。「@」を使うことを思い付くとは思えない。
まぁ、でも、私が手紙を受け取ったことを、妻に知らせておくのは良いだろう。
どんな顔で、白を切るか、少し楽しみだ。

しかし、その期待は、裏切られることとなる。
サンダルを脱いで、家に入ると、「お母さんがいない」と2人の娘が半べそをかいていた。
確かに、家の中に、妻はいなかった。ご丁寧に、ダイニングにブランチが用意してある。
しかし、置手紙すらない。……手紙? ひょっとして、あの煙突からの手紙がそうなのか?
だとすると、訳が分からない。そもそも、妻の体型は煙突というより樽だ。いや、私も他人のことは言えないが……。
となると、「えんとつより」が、暗号を解くカギなのか?
煙突? この辺に煙突なんてあったかな? 読み替えか? 「円と津寄り」……いやいや、余計に訳分からん。

ケータイに電話しようかと思ってやめる。それじゃあ、ギブアップになってしまう。

頭を悩ませていると、小さなお化けが2人、「とりっく おあ とりーと」と言ってきた。
「やぁ、かわいいお化けだね」
「ねぇ、お母さんいなくて、今夜のハロウィーン・パーティーは、どうするの?」
「そうだねぇ」
と答えつつ、ちょっぴり傷つく。今日は私の誕生日だ。それなのに、今日のパーティーのメインは、明日のハロウィーンの前倒しで、私の誕生日は、ついでだという。
昔はこんなことはなかったのに、いつからか、誕生日がクリスマスや正月の奴の気持ちが分かるようになってしまった。

「こんなにかわいいお化けさんを放っておいて、お母さんは、何をしているんだろうねぇ」
まったく、パーティーの準備もしないで……。

ん? 今、何か引っかかった。なんだろう、「ハロウィーン」? いや違う。「かわいいお化け」? 「お化け」?
「お化け煙突だ!」
私が、いきなり大声を出してしまったので、2人の娘は、かなりびっくりしたようだ。

子どもの頃、私が住んでいた町には、お化け煙突と呼ばれる5本の煙突群があった。
見る場所によって、見える煙突の本数が変わるので、「お化け煙突」と呼ばれていた。

私は、すぐに、パソコンに向かい、グーグルアースを呼び出す。

煙突が2本に見えた駄菓子屋。
煙突が3本に見えた五十鈴橋。
煙突が4本に見えた秘密基地。
煙突が5本に見えた高台。

すべて幼馴染だった妻との思い出の場所だ。
今はもう、煙突もないし、駄菓子屋もつぶれた。
しかし、道や川が変わってないので、それぞれ位置は判った。

駄菓子屋と高台を結んだ線と五十鈴橋と秘密基地だった場所を結ぶ線、その交点にあたる場所を、こんどはストリートビューで見る。
一軒の店があった。
その店を調べると、そこはとても小さな店で、だけど、逆に、小さなパーティーをするには、もってこいだという。

じゃあ、「3@18」は?
そうか! おそらく3はSUN。Sundayつまり、日曜日である今日だ。
そして、at 18は18時だ。


時計を見ると、もう午後4時半だった。少し早いが良いだろう。なんだかじっとしていられない。
娘2人に「お母さんが待っているところへ行くよ」と言って、支度をさせる。
そうだな。お化けの格好で行こうか。
作品名:煙突からの手紙 作家名:でんでろ3