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4章 ハリーの思い切った行動



ドラコは食事を取るときはいつも、ほぼ決まった場所へ毎日座っていた。
彼の座る場所はスリザリンの右側後方のテーブルだ。
もちろん左隣には、クラップとゴイルが並んで座って、ドラコを挟むようにその反対側にはパンジーが座っている。
これがいつも4人の定位置だった。

クラッブとゴイルは朝からものすごい食欲で、トーストやハムにかぶりつくのを見るだけで、低血圧気味のドラコは胸焼けがして、あまり食が進まなくなる。
毎朝のことだが、こればっかりは慣れそうにない。
パンジーはドラコの皿のベーコンエッグがあまり減っていないのに気づき、大げさにため息をつく。
「だからドラコは考えなしなんだ。いつも朝っぱらから、こんな脂っこいものばかりオーダーして。やっぱり、食べれないんだろ?その皿は放っておいて、オートミールにしろ。わたしが頼んでやろうか?」
ほとんど男言葉のようなぶっきら棒な言い方で、パンジーは尋ねてくる。

パンジーはその花の名前に似つかわしい、ふっさりとしたまっすぐの艶のある黒髪を肩で揃えている、細身の女の子だ。
眉に添うように切り揃えられている前髪から、大きなすみれ色の瞳でまっすぐ相手を見つめて、瞬きをあまりしないのは彼女の癖らしい。
パンジーのどこか直線的でひんやりとする外見や、少し低めの声や、きびきびとした素振りには、女の子特有の甘さや媚が全くなかった。

それもそのはずだ。
彼女を筆頭に下に3人も弟がいる4人兄弟の長女で、ナヨナヨしていたら病弱な母親に代わって、やんちゃ盛りの弟たちの面倒など到底見れないからだ。
いたずらをすると容赦なく叱り飛ばし、わがままを言うとそれを論理ときっぱりとした態度でねじ伏せ、ゴットマザーごとく、最強の長女として弟たちの上に君臨していた。

黒髪がトレードマークのパーキンソン家で、子犬のような巻き毛の弟たちは、とびきりかわいいくせに容赦のないそんな姉が大好きだったし、もちろん彼女も弟たちを大切にして、誰よりも愛していた。
彼女のツンとすました横顔は冷たく見えても、結構面倒見がいい性格だった。

ドラコやクラップたちは彼女の一番の古い幼なじみで、物心ついたときからいっしょに遊んでいた記憶がある。
彼らもパンジーのキツイ横顔も、オーバーアクションが苦手なところも、サバサバした性格も、そっけない口調も気に入っていた。
彼女はどうやら、女の子どうしの粘着的なほどベタベタした甘ったるい関係は好きではないらしい。
実際にパンジーには女友達は皆無だったけれども、男の友達は多く、スカートを履いてなければ自分が女だと気づいていないのかもしれない
家に帰れば弟たちに囲まれ、学校でもドラコたちと行動を共にしているので、なおさらの感があった。

4人の中で背が一番小さく小柄なくせに、パンジーは弟たちと同じような態度で、当たり前のようにドラコたちにも、あれこれと口を出し、手を出した。
ゴイルが腹をこわしたといえばすぐ保健室に連れていき、クラップの苦手な箒乗りを容赦なく猛特訓をしたり、お坊ちゃん育ちのドラコの世間知らずなところをフォローしたりして、身の回りの世話に余念がない。

パンジーは皿から顔を上げると、クラッブの前に手をだした。
「はい、ストップ!おまえは食べすぎだから、もうそれ以上食べるな」
と指令しつつ、横のゴイルにも目を走らせる。
「そんな一気に牛乳をがぶ飲みするな。むせるぞ」
ときびきび注意しているのを、ぼんやりとドラコは見ていた。
いつもの朝のありきたりの光景だ。

少し眠たいのは低血圧のせいではなかった。
グリフィンドールのテーブルにハリーがいなかったからだ。
(また時間にルーズなポッターのことだ。寝坊でもしてるんだろう)
とぼんやりと考えて、パンジーが追加オーダーしてくれたオートミールを口に含む。
この柔らかすぎる米の食感はあまり好きではないが、仕方がない。
上の空で、おいしくともなんともない食事をもそもそとスプーンを動かして食べ、ピッチャーからグラスへと水を注ぐ。
「ドラコ、口の端からオートミールが垂れているぞ」
素早く見付けて、パンジーはすかさず指摘した。
ドラコは急いでナプキンでそれを拭った。
良家の子弟としてあるまじき失態だ。
「――いいか、お前は選ばれた最上級ランクの貴族の息子だ。言うなれば純血の看板みたいなもんだ。シャンとしてくれ」
こそっと小声ではあるがパンジーが苦言を言うと、ドラコは顔を引き締めてうなずく。
今度は背筋を伸ばし、優雅な仕草でスプーンを口に運んだ。
ちらっと横を向くとパンジーが満足そうな顔でうなずき、ニッと笑った。

与えられた朝食の時間があと10分を切ったころ、やっとハリーは大広間にやってきた。
少しぼんやりとして寝不足の赤い目で、しきりとまぶたをこすって、ロンたちの隣に座る。
南に大きく窓を開いた大広間には朝の光が溢れて、朝食の湯気といっしょにキラキラと光が踊っていた。
それがまぶしすぎるのか、困ったような顔で、ハリーは目をしばたかせていた。

この光の渦と睡眠不足で、彼の眼鏡のピントがどうも合わないらしい。
ハリーは仕方がないような顔でため息をつくと、眼鏡を外すとそれをテーブルに置き、あたりを確かめるように見回した。
眼鏡を外したほうが今は目にいいのか軽くうなずくと、そのままスープのみをオーダーする。
スープが出てくるのを待っているあいだ手持ち無沙汰なのか、またハリーは辺りを見回す仕草をする。
まるで誰かを探しているような素振りだ。

ドラコは珍しいハリーの眼鏡のない素顔を見て、思わず噴出しそうになった。
高い真っ直ぐな鼻梁も、緑の瞳が澄んできれいな形をしていて、全体的に造りは悪くはないというか、ハンサムな部類に入るほどかなりいい線いっているのに、どこか間の抜けた顔に見えてしまう。
眼鏡がないだけでハリーの顔が、ピンボケしたように締りがなくなる感じが、見ていておかしい。
ドラコはたまらず下を向き、(クククク……)と小さくむせるように肩を震わせて笑った。

ひとしきり笑って満足すると、顔を上げると、こちらを見ていたハリーと目が合った。
眉間にしわを寄せ、目を細めて、ドラコのテーブルを伺っている。
その目つきの悪さは、眼鏡がないせいなのは分かってはいるが、何だか喧嘩を売られているようで、ドラコはムカムカしてきた。
ドラコもむすっとした顔で睨み返した。

やがて、ハリーは視線を外して、慌てて下を向いた。
そして居心地が悪そうに、ポケットに手を突っ込んで、なにやらごそごそしている。
かなり遠くからでも分かるほど、今朝のハリーの顔色はあまりよくなかった。
やがて眼鏡を掛けなおし、ロンたちに一言二言告げると、スープが出てくるのも待たずに席を立って、大広間から出て行った。

ドラコは気になって席を立つ。
あまりにもハリーの挙動が不信だからだ。
あとをつけてみようと思った。
偶然に何か面白いものを発見できたら、それをネタにネチネチ嫌味でも言ってやろうとほくそ笑む。

ハリーは長めの上着の裾を翻して、足早に誰もいない廊下を歩いていく。
向かっているのは中庭だろうか。
作品名:T&J 作家名:sabure