続・銀河鉄道の昼
☆これまでのあらすじ☆
西暦2012年。
地球は重力と云うものを失った。
しかし、それを早々に知っていた優秀な人間たちよって重力を作る機械を作り、事なきを終えた。ただしこの事実を知っているのはごく限られた人間のみで、一般人は知るよしもなく平和に過ごしていた。
それから500年後の世界。
ごく一般的な文学少年の淳は、ひょんな事から地区ごとの重力を制御している装置を発見、そしてその一つを意図せぬ事故により壊してしまう。
その影響はすぐには現れず、徐々に淳の住んでいる地区の重力が失われていく。
宙に浮かび始める人や建物。
それを食い止める為に淳は立ち上がるのであった。
これは『銀河鉄道の昼』を別の視点で語られる物語・・・
随分と昔の有名な作家の作品で確か・・・確か・・・『銀河鉄道の何とか』って云ったような。
別に読んだこともなければ、興味があるわけでもない。
ただ、私の友だちが大ファンで、よく話をしていた。
それが何となく頭をよぎった。
今、私の目の前に広がる世界。
常識では考えられないような世界。
機関車が空を漂っている。
不思議な光景だ。
昔の人たちは未来の乗り物は空を飛ぶって想像してたらしいけど、現実は違う。
どんな未来になろうとも、空を飛ぶモノは決まっていて、鳥か虫か飛行機かって程度だ。
だから空を見上げて機関車を目にすることはないはずなのだ。
だから不思議な光景なのだ。
しかし、空を漂うのは機関車だけじゃない。
沢山の車や建築物、看板、そして・・・人間。
全部、地面とはほど遠い世界にいた。
それらすべてが空を漂い、更には徐々に上昇していっている。
みんな空を越え、地球を飛び出し、宇宙に向かっているように見える。
でもやっぱり機関車が一番目立つ。
思わず叫びたくなる。
「行けええええぇぇぇぇ!!!」
機関車はグングンと宇宙を目指す。
一瞬、ピタっと世界全体が止まったように見えた。
突然浮力を失い、落ちていく。
沢山の車や建築物、看板、そして・・・人間。
みんな落ちていく。
もう少しで地球を抜け出そうとしたあの機関車でさえも。
嗚呼、銀河鉄道になり損ねたのか。
あ、そう云えば、そう。
私も落ちているんだっけ。
地面まであと、100メートルってとこかな。
END