終わりの夢
時間は少しの時差を残してすぐに遠のくし、
揺り篭に揺られていながら、地球が逆さまになって重力がひっくり返った宇宙に放り出されていても
爪先のインクを気にしながら、明日になる夜にバイクの音で目が覚める。
昨日など何処にも行ったりしない。
今日すら特に明確で、明日は常に影となって。
今すぐに足元から地割れが起きて、天井まで伸びた雑草の幹が
寝転がった私の腹に降りてくれば、地球が割れていく音を聞きながら、私は其処から動かないで済む。
広い窓を横に転寝している時に、巨大な像が突進してきて粒のように私を踏み潰してしまえば、
雨空を気にして外出を躊躇っていたのも気にしないで済む。
それでも僅かに噛みあわなくなっていく時計の秒針は知らぬ顔で過ぎていくのに。
何も変わりなどしない。
教科書が色褪せて、カラーがセピアに変わっても、私は今もじっと此処から地球が割れていくのを願っている。ぼんやりと、在りもしない奇跡ばかりを夢想して面白そうに笑う。
飛び続ける鳩の首に捕まって、重力の失せた空に溶ければ、そのまま何処へ落ちていくだろうか。
鈍い引力に引き寄せられて、土星の輪に巻き込まれてミックスジュースになる頃に
それでも電池の切れない時計の針は、澄んだ窒息の世界を漂いながらも夜明けに近付こうとしている。