至福の手紙
至福の手紙
どうしても、腑に落ちない
なぜだったのか、
それはいつだったのか
私を有頂天にさせたあの手紙を
なくしてしまったなんて
「好きです、大好きです」
冒頭の二行だけしか憶えていないけれど、
あの、余りにも嬉しい手紙を
なくしてしまったなんて
告白して、一年待って
待ちわびて、待ち続けて
漸く届いたあの嬉しい手紙を
なくしてしまったなんて
あなたから贈られた
蒼いネクタイも
あなたが編んでくれた
長い手編みのマフラーも
なくしてしまったなんて
あれから膨大な年月が過ぎたけれど
残っているものがある
幸福だった日々の思い出が
私の心の中には今も深く刻まれている
あなたの澄んだ瞳と笑顔は
真夏の太陽のように今も
眩く輝き続けている
あなたは今、幸せだろうか
あの頃の輝く笑顔と共に
暮らしているだろうか
あの頃のように
今も生真面目な、角張った文字を
書いているだろうか