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新宮紗弥香
新宮紗弥香
novelistID. 31525
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思い込み

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目に見えないだけで、そこにはちゃんと「それ」がある。

『愛してるよ』
電話するたび言われる嘘に、私は身を委ねてる。
「ありがとう、私も愛してる」
そんな、嘘で固めた会話に、うんざりする。
「ばいばい」

楽しい会話、おいしい食事。
デートするたび重ねる時間に、私は心を委ねてる。
「月、綺麗だね」
「…お前のほうがな。…なんてな、ははっ」
そうやって笑う彼に、何だか引けて。
そのうち全て、無くなってしまいそう。

幸せなはずのこの時間、この形。
嬉しいはずの、言葉も、仕草も。
何だか胸を、締め付ける。

プルルル…。
突然鳴る、ケータイ。
光る、彼の名前。
「もしもし、どうかした?」
『…会いたい』
「…ん、わかった」
『今からそっち、行ってもいい?』
「うん、平気だよ」
『ありがとう』
プツリ、切れる通話。
切なげな、彼の声がリピートされる。

『…会いたい』

二人を包む、沈黙。
それを破るのは、いつも彼からだった。
「ごめん、こんな時間に」
「ううん、平気。眠れなかったし」
PM10:27
眠れなかったなんて、嘘。
「そっか…」
スーツ姿のあなたは、仕事終わりと一目でわかる。
「どうしたの?急に、会いたいなんて」
「いや、今日会社でさ、上司にこっ酷く叱られてさぁ…。分かんないけど、会いたくなって」
「そうなんだ。…お腹、減ってない?」
そうやって、立ちあがった。
「いや、大丈夫」
座ったままのあなたに、ぎゅっと足を抱かれる。
「どうした?」
笑いかけてみた。
「いかないでいいから、隣にいて…ください」
「なんだそりゃ」
苦笑を浮かべて、わかったよ、と一言。
腕が足から離れて、私は彼の隣へ、再び座る。
彼からは、女物の香水の匂いがした。
「ねぇ、上司って…女のひと?」
「え?何で?」
「だって、女物の香水の匂い、するから」
「えっ、まじ!?うわー、最悪…」
俺の上司さー、ねちっこいんだよー!なんて、彼は言う。
「もう、ほんと、嫌になるわ…」
ソファにもたれる彼の首が、うつらうつらと揺れる。
「眠い?」
彼の瞼がとろん、と、しているのが分かる。
「ん、ちょい眠~…」
そう言って、彼は私の肩に頭を乗っける。
「もう、寝るなら布団で寝なさい」
私がそう言うと、彼はこっちを向いた。
「わかった、じゃあ…」
ひょい、と、彼が私を持ち上げた。
「一緒♪」
「ちょ、ちょっと!?」
そのままベットに運ばれる。
すごく、すごく優しく、ベットの上に私を下ろした。
「び、びっくりしたー…」
ベットの上で胸をなでおろすと、彼――智(さとる)――が上に被さってきた。
ぽす、と、ベットに手をつく智。
「理子さぁ、勘違いしてない?」
智は、ぐいっと顔を近づけ、そのまま私に、キスを一回。
「えっ…?」
考える間もなく、もう一度キスされる。
そしてそのまま、押し倒された。
「さ、智?」
名前を呼ぶのも、呼ばれるのも久しぶりな気がして。
私はずっと、戸惑っていた。
「ヘタな探り入れたって無駄。俺には理子だけだもん」
そう笑って、またキス。
今度は、今までとは違う、深いキス。
「んぁ…」
「わかった?」
コクリ、頷いた。

それから布団にもぐりこんで、私は智にくっついた。
智が泊って行くのも、一人じゃないベットも、久しぶりだった。

気づいていなかっただけ。

分かってなかっただけ。

目に見えないだけで、そこにはちゃんと「それ」がある。
作品名:思い込み 作家名:新宮紗弥香