化け物の幽霊
大助は田舎の小学生です。
家のすぐ近くに松林があり、秋にはハツタケが沢山採れます。
ハツタケはハツタケご飯にすると とても美味しくて毎日食べても飽きない大助の大好物なのです。それもあってハツタケ採りは大助の大きな楽しみのひとつになっているのです。
そんな秋の有る日、大助が学校で用事があっていつもより大分遅い時間に学校から帰ってくると家には誰もいません。いつもならその時間はお兄ちゃんも帰っていて一緒にハツタケ採りに行っている時間です。それでお兄ちゃんが一人でいってしまったと思いました。
大助もすぐに行こうと思いましたがそろそろ暗くなる時間です。それで今日は ハツタケ採りに行かないと決めてお兄ちゃんを持つ事に決めました。
しかしそのうち警察のパトロールカーが、何かスピーカーでお知らせをして巡回している事に気が付きました。
よく聞いてみると「化け物の幽霊が出没しています。暗くなったら絶対に外には出ないようにしてください」と言っています。
(化け物の幽霊!?)大助は驚きました。化け物も恐ろしいし 幽霊も恐ろしい、そして化け物が幽霊になったら一体どれ程恐ろしくなるのか?
大助は(早く兄ちゃんに知らせなければ)と思い、急いで林の中に入りました。
そしてお兄ちゃんには早めに会えました。
「大助、今頃来ても遅いよ。今日は特に沢山採れたし もうすぐ暗くなるから帰る途中だったんだ」とお兄ちゃんは沢山摂ったハツタケを見せて自慢げに言いました。
「それどころじゃないよ!兄ちゃん。化け物の幽霊が出るんだって!暗くなったら大変なんだって!それで呼びに来たんだよ」と大助。
「化け物の幽霊?それってどんな奴なんだ?」
「知らないよ!そんなの!でも警察が暗くなったら危ないって知らせて周っているんだよ。早く帰らないと大変な事になっちゃうよ」
「分かった。とにかく早く帰ろう!」
そうやって二人は急ぎ足で林の出口近くまでやってきました。
しかしその時に大助は何か雰囲気を感じてしまいました。そこには小さな潅木があるのですが、そこに目が行ってしまうのです。
それはハツタケ探しと同じです。ハツタケ採りを長くやっているとそこにハツタケが有るのが身体で感じて意識しなくても目がそこに行ってしまようになるのです。
(まさか化け物の幽霊?)と思い大助は目を剥きました。
すると黒い濃いモヤモヤしたものが現れました。そしてそれはどんどんはっきりした形になっていくようです。
それで大助はダッシュしてそのモヤモヤに殴りかかりました。それは大助の命を懸けた攻撃でした。今何もしなかったらお兄ちゃんも僕も殺されると思ったのです。
しかし大助のパンチはただ空をきるだけで何のてごたえもありません。
大助はあまりの恐怖に背筋が冷たくなりました。自分の体が恐怖ですくんでしまい動かなくなってしまったのを自覚しました。
それでも大助は泣き出しながらも最後の勇気を奮ってモヤモヤに突っかけました。
しかし体が思うように動かず転んでしまい、そのまま失神してしまいました。
大助が目を覚ましたのは家でお父さんとお母さんそしてお兄ちゃんと妹が見守っているところでした。
お兄ちゃんの話では大助はいくら起こそうとしても起きないので おぶって連れてかえってくれたそうだ。しかしお兄ちゃんは黒いモヤモヤは見えていなくて 、大助が戦っているのを 何をやっているのか理解出来なかったそうです。
それで大助は自分が恐怖心を募らせたせいで、本当は何も無いのに あのモヤモヤが見えてしまったのかと思いました。
次の日、警察のパトロールカーが「化け物の幽霊は隣町に移動しました。今日は安全なはずですが、一応暗くなったら外出を控えてください」と朝から広報して周っていました。
それで大助は学校から帰ってすぐに一人でハツタケ採りに出かけました。
本当は一人で行くのは怖かったのですが、自分が臆病のせいで悔しかったのです。
見えないものが見えてしまった事が悔しかったのです。そのまま怖れていたらもう二度とハツタケ採りに林に入れなくなってしまうと思って。
そして大助は林に入ってすぐに特大のハツタケを見つけました。これほど大きいのは自分が今まで採った中で最高に大きいだけで無く、他の人が採ったのを見た中でも最高に大きいものでした。しかもそのハツタケはまだ傘が開ききっていない いかにもハツタケらしい綺麗な形でした。
それで大助は嬉しくて一人出来たのに他の人に聞こえるように「あったー、でかい!」と声を上げてしまいました。
そして慎重に採って籠に入れました。
その時です!
大助はまたモヤモヤが見えてしまったのです。
大助は気絶しそうになりながらもそのモヤモヤを見つめました。
するとモヤモヤが「お前は勇気の有る子だ」と言いました。
大助は驚いてしまい自分が殺されると思いました。それで、「僕は勇気なんかありません。殺さないで下さい。助けてください」と必死でお願いしました。
「いや、お前は勇気が有る。私に戦いを挑んだ人間は数千年ぶりだ。それもこんな小さな子供だとは。私はお前を祝福しよう」とモヤモヤが言いました。
「しゅくふく?しゅくふくってなんですか?」と大助が聞きました。
するとモヤモヤは少し笑ったような声を出してから「少なくてもお前を殺さないという事だ。安心しろ」と言った。そして「しかし私の事を他の人間にする事は許さない。言ったらすぐにお前を殺す。これは肝に銘じておけ!」と圧倒的な威厳の有る口調で言った。
そしてモヤモヤは消えてしまいました。
大助はホッとしてハツタケ採りは止めてすぐに家に帰りました。
家に帰ると大助が取ったハツタケの大きさに家族のみんなが驚き褒めてくれました。
それで大助は(祝福ってこれだったのかな)と思い、嬉しくてたまりませんでした。