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『ストーカー』

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俺は薄れてゆく意識に逆らうように、重い瞼を開けた

俺は小さな箱の中にいた
窓も、扉も見当たらない
どうして僕はここにいるんだ?確か自分の部屋にいたはずだ

必死で体を起こそうとするけれど
指先までじんじんと痺れて、手足の自由がきかない
まるで足枷を嵌められているかのような…

待て、落ち着いて考えてみろ
ここ数か月何かがおかしかった
常に誰かに監視されてるようだった、外に出るたびに奴は後ろからついてきていた

なんでつけられてるのか皆目検討がつかない
俺は普通のサラリーマンで、人に恨まれるようなことなど出来ない気の弱い人間だ

時々勇気を出して振り返り、尻尾を掴んでやろうとするのだけれど
奴は隠れるのが上手いらしい、後ろ姿さえ見付けることが出来なかった

俺が仕事で行き詰まって辛い思いをしてる時
奴は後ろでケラケラ大声で笑ってた

彼女にふられた時は、一晩中呪いの言葉を呟かれたせいで寝ることも出来なかった

今思えば精神的に俺を追い詰めて、弱らせる作戦だったんだろう

そうだ、それで外に出るのが怖くなって
初めて仕事を休んだんだった
その時から記憶がないぞ

奴はいつも側で俺を見てたんだ、この部屋に閉じ込める機会を狙ってたんだ
なんてこった、このままじゃきっと殺されちまう!

俺は力を振り絞って叫んだ
「おおい、誰か!助けてくれ!ここから出してくれぇ」








叫び声が聞こえて看護師は振り返った
ああ、また独房の患者さん起きちゃったのね
あの様子じゃ、退院はまだまだだわ

『仕事と人間関係のストレスによる自殺願望』
『手首を切り暴れたため、鎮痛剤投与』…

一通りカルテに目を通すと、彼女は彼のもとへ向かった
その手に注射器を握りしめて…
作品名:『ストーカー』 作家名:やぁこ