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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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SOUVENIR II 郷愁の星

INDEX|38ページ/39ページ|

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◆9


 「ランディ様!」
 賑やかな声で、ランディは目を覚ました。執務疲れのせいか、どうやらうたた寝をしていたらしい。
 「ほら、もうすぐ着きますよ、ムワティエに」
 窓をコンコンと指でこづきながら、闇の守護聖の少年が笑う。
 「思ったよりもう半分の星じゃないんですね」闇の守護聖よりなお若い炎の守護聖が窓から外を眺めて言った。
 「だって、僕が力を送ってるんだよ? そして民たちも懸命に土地を耕したんだもの、そうですよね!」
 ランディは頷いてみせた。
 「ところでランディ様、聖地から抜け出して大丈夫なんですか?」心配そうに炎の守護聖が言う。「首座のランディ様が無断でいなくなったら大変では……」
 「ゼフェル様が怒るかも」くすくすと闇の守護聖が笑う。
 「ゼフェルは恐くないさ」ランディも笑った。「聖地を抜け出すことにかけてはゼフェルも偉そうなことは言えないからな。それより恐いのは」
 「あ、マルセル様ですか?」
 「言うときはぴしりと厳しいからな、マルセルは」ランディが肩をすくめると、守護聖の少年たちも笑った。
 ランディは座席から立ち上がり、二人の頭を思いきり撫で回すと叫んだ。
 「ほら、身支度をしろよ、二人とも!」
 「はぁい!」
 二人が行ってしまった後、改めてランディは窓の外を見た。
 惑星d−13916018a−−ムワティエはもう半円とは言いがたい形になっていた。ぼんやりとではあったが、球体であることがこの距離からでもわかる。それが、この星の上を長い時が流れた証明でもあった。