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クリスマスプレゼント

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「痴漢でしょうね。悪いやつがいるんですね」
「そ、そうですね」
 わたしは凄く怖いことだと思ったわ。貧血で倒れたらどうしよう。そう、思ったの。
「警察へ行きますか?被害届けをしますか?」
「でも、急いで帰らないと……」
 わたしは俯いたままそう云ったの。
「そうですか。送って行きましょう。セーターを返してもらわないといけないし」
「そうですよね。わたしの家まではバスで二十分です」
「ぼくの車に乗って行ってください」
「でも、いいんですか?」
 驚いたわ。わたしの眼に映った男性は、超イケメンよ。映画俳優のようだったの。
「障害者専用の乗り場は知っていますか?」
「はい。紅い彫刻があるところですよね」
「そうです。ぼくの車はグリーンです。そのセーターと同じ色です。じゃあ」
 男のひとは行ってしまった。わたしは買ったケーキを持ってそこへ行った。わたしは男のひとの顔を心に刻んでいたわ。声も、もちろん聞いたわ。やさしい、すてきな声のひとだったわ。