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否定破壊

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彼女は天使の様に微笑みながら悪魔のように酷いことをする女性だった。

彼女は悪魔の様に微笑みながら天使のように良い事をする女性ではなかった。


餓えて倒れている人がいれば、目の前に座りこみパンをかじる。
今にも成敗されそうな悪党がいれば、正義諸共倒した。
彼女は桁外れだった、彼女は型外れだった。
彼女は心底人から外れていたが、ハズレではなかった。

僕の心を魅了するにはとても、とてもあまってしまうほど、
点数などつけることすら出来ないほどに彼女はアタリだった。

彼女は何時だって笑っていて、何時だって気まぐれで
何時だって自由で、何時だって嘆いていた。


「どうして、私以外はみんな同じなんだ」


彼女は言う。絶えない疑問を口にだす。
彼女は嘆く。世界を嘆く。

そして彼女は笑う。まぁいっかと笑う。
彼女は笑う。世界を笑う。


「楽しい。どうしてこんなに楽しいのだろうか」


彼女は全てを壊すのが好きだった。創造よりも破壊が好きだった。
ブレイカー。そう彼女を人は呼んだ。
彼女は全てを壊した。

まずはじめに壊したのは自分の人格。

人格を壊して今の彼女になる前の彼女はまるで人間のようだった。
つまりは今の彼女の言う彼女以外は"みんな同じ"だったのだ。
至って普通だった。少し優等生でちょっと頭が良くてそれなりに運動が出来たが、
人の枠を飛び出したりはしていなかったし、その枠から飛び出そうとも思っていなかった。
その時の彼女は僕にとってアタリではなかった。
心底ハズレていた。どうしようもなくハズレていたし、この先彼女がアタリになることなんて
あるはずもないと思っていた。
だけど彼女は壊した。壊したのだ自分の人格とその価値観を木端微塵に、跡形もなく
綺麗さっぱり破壊した。
次に壊したのは何だったかな?そうだ、そうそう。病院のベットだ。
次は窓ガラス、次は駐車場の車全部、次は小学生のラジコン、
道を歩くお婆さんの杖、ベンチに座るカップルのお揃いの指輪。
とにかく壊した。目に付くもの壊した。

ある程度壊しつくした彼女は言った。

「あぁ…次は何を壊そう」

僕はいった。

「全部を壊すなんて不可能だよ」

彼女は笑った。

「そうだ、それだ、それしかない!」

不可能だ。

私は不可能を壊す。
出来ないなんていう否定した考えそのものを壊す。


彼女は笑う。
彼女は壊す。


あぁ、何時の日か僕も壊して欲しい。
この身体もこの脳みそも何もかも壊しておくれ。
死だけでは足りない何もかもを粉々に。
君のその笑顔で壊してくれ。
二度と作り直すことなど出来ない程に木端微塵に、跡形もなく、綺麗さっぱりと
破壊してくれ。



彼女は壊す。全てを壊す。
初めて壊したものは自分自身の人格と価値観。

彼女は外れる。人から外れる。
型外れの彼女はどこまでも外れていてそしてハズレてない。

彼女は笑う。笑う。
何もかもが楽しいとわらう。


彼女は不可能を、否定するその考えすらも、肯定するその希望すらも、
彼女は愛する絶望すらも、憎む目的すらも、終わる絶無すらも、
壊す。壊す。壊すことを壊す。

彼女は壊す。否定を壊す。

人は彼女を皮肉交じりにこう称した。

否定破壊。


"ネガティブブレイカー"


さぁ壊しておくれ、人が作り出す物も感情も、そして人すらも。


作品名:否定破壊 作家名:楽吉