意味なき短編。
黒き移民
我々はみな移民であると思う。
誰もそれを自覚しない。毎日を家から職場、職場から家に移動し、常に休むことを知らない。
私はそれを自覚した。そうすると社会の歯車が動いているのが、実に馬鹿らしく思えてくるのだ。私は移民であることをやめた。
移民は定住する人々を笑う。しかし、定住者は移民の上に立つ存在である。彼らはそれに気付かない。そもそも、私は生まれた頃から移民であったのだろうか。人はなぜ移民になるのか。
今日も街は移民で埋め尽くされる。
定住者は息を潜め、それを黒い箱の向こう側に見る。
赤い移民は少なく、黒い移民は日々増えていく。