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ルック・湊(ルク主)

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認知



翌日。朝にはいなかったが、午後、気づけば石板前にはルックが立っていた。
通りかかったシーナにルックが気づき、つぶやく。なぜだかかなり機嫌が悪そうだ。

「シーナ・・・」
「お?ルックじゃん!早いな!って、アレ?何か不遜な空気!?ちょ、なんか昨日から色んな奴からの、視線やらなんやら色々痛いんだけど、なんで?俺どうしよう?」
「死ねばいいと思うよ。」
「ちょ、何その笑顔で即答!?せっかく珍しいルックの笑顔なのに黒い、とんでもなく黒いっ。そしてナイよね?そのセリフはないよね?」
「大アリだから。本気であんたが悪い虫になるとは思ってなかったよ。最悪。」

もはやルックの目はゴミ虫を見るような目だ。
って、ちょっと、待て。悪い虫・・・?シーナは首を傾げた。

「おい。何言ってんだ?何の話だ?」
「・・・とぼけてんの?それとも本当に思い当たりがないの?今、もっぱら君が湊と良い仲になってるって城中の噂でいっぱいなんだけど。」
「は、はぁぁ!?な、なんだよそれ!?俺、知らねえぜ!?」
「火のないところに煙はたたないと思うけど?」

相変わらず否定したのにも関わらず、ルックの目線は冷たかった。いやもう、今すぐ身体、凍ってもおかしくないかもしれない。

「ほんとなんもねぇよ?本人に聞けばいいじゃん!」
「湊は今朝から用事で出かけているらしい。」
「わー。ちょ、まじ心当たりねぇって!あ、ちょ、おい、フリック!ちょうどいいところにっ!俺が潔白だと証明してくれよ!」

ホールに通りかかったフリックを見かけた。
シーナは、気づいて心底関わりたくなさそうなフリックをむりやり石板前に連れてくる。さすが能力の運、が低いだけあるフリック。

「潔白って、何の話だ。俺にお前の女関係をふってくるな。」
「いや、違う。なんか昨日から城内で、俺と湊がデキてるって噂が流れてるらしい。知ってるか?」
「は・・・?・・・あ。そういや兵士達がそんな話をしてたな。」
「・・・へえ。」

ルックの周りの空気の温度が一段と下がったような気がした。

「ちょ、フリック!役に立たねえなオイ!」
「だったらもう解放してくれ。」

ルックの底冷えのする雰囲気に引きつつ、フリックは言った。
そこに訓練を終えたらしい赤と青の騎士が通りかかる。

「あ、ちょっと!なんか昨日から変な噂が流れてるみたいなんだけど、俺、関係ないって証明してくんない!?」

シーナは藁をもつかむ思いで声をかけた。

「証明と言われましても・・・。」
「そう言われるが、昨日もなにやらホールで仲良くされていたところをたくさんの方々が目撃されているらしいが。」

カミューとマイクロトフの口調はいたって丁寧ではあるが、こころなしか対応が冷たい。

「昨日のあれは違ぇえ!!」
「昨日のあれって分かるくらいには、心当たり、あるんですね?」

そこにフッチやらそのほかの面々も、気づけば集まってきていた。
何コレ。
公開処刑?
新手のいじめ?
シーナは妙に居心地が悪かった。その横でフリックが少し憐れむように、だが突き放すように言う。

「すまんな、役に立てん。だが、多分普段のお前の行動のせいじゃないのか、皆の視線が冷たいのは・・・。」

確かに、皆が大好きな湊と付き合ってる、となるだけだと、ショックを受ける者はたくさんいるだろうが、湊がそれでいいなら誰も文句はないだろう。それほどに湊は大切に思われている。
だがシーナとなると話は違う。
普段から色々な女性に良い顔をしているシーナが相手など、もしかして、湊は弄ばれているのでは・・・?といったような考えに至る者が大半であるようだ。

「えー。なんもしてないのにー。そんなならいっそなんかしておけば良かった・・・。」
「・・・バカじゃないの?」

ルックがつっこんだ。

「あれ?ここに集まって、なんかあったの?」

その時シーナ的に天使の声が聞こえた。

「わーん、湊!会いたかった!皆が酷いんだぜ!」

そう言うシーナの横でフリックが、そういう軽い態度がいけないんじゃないのか?と呟いている。

「へ?なんで・・・・・・って、ルック!!」

話している途中でルックがいるのに気付いたらしく、湊はホールを走って近づいてきた。

「おかえりっ、ルック!」

そうして見る者を幸せにしそうなほどの笑顔で、湊はルックに飛びついた。
思わずまわりはほんわか、となる。ルックも、ちょっと、とか言っているがあきらかに嬉しそうである。

「ほらー、見ろよ、俺とどうにかなってる子が、俺無視してルックに飛びつく訳ないだろ?」
「・・・なんだかそのセリフを言うあなたがほんのり可哀そうですが、まぁ確かにそうですね。」

なぜか得意げに言うシーナに、カミューが答えた。

「まじ昨日のはあんたらの勘違いだって。あれだろ?多分俺が湊のスカーフとか弄って鏡の前にいた時とかじゃね?あれはー、湊に教えてやってただけだよ。あんたらも見たんだろ、湊のアレ。」

シーナがそう言うと、ああ、と周りが少し切なそうな顔つきになる。

「ほんとなんの話?」

湊が改めてシーナに聞いた。
「ああ、昨日さ、お前にマークの事、教えてやってたとことか見られて、なんか俺とお前が出来てるって噂が立ってたらしいぜ。」
「っえ!?ちょ、な、なんだよそれ!つか、思い出したっ!ルック!!酷いじゃん!僕全然気づいてなかったんだからね!皆になんか変な目で見られてたんだからね!!なんであんないたずらすんだよっ!」

わーお、いたずら、で片づけられてるぜ、ルック。シーナはほんのり憐れんだ目でルックを見た。その視線に気づいたルックはム、とシーナを見返す。フリックはそんなシーナを見て、その前にお前はスルーされているんだぜ?とさらに憐れんだような目になっていたが。
周りでは、あのルックが・・・?とざわざわしている。

「いたずらをした覚えはないよ。」
「え、だって・・・」
「僕はただ色々と鈍い君にイラついたのと、あとはそこにいる彼らへの牽制の意味をこめてしただけ。」
「・・・へ?」

湊はなんの事か分からない、と首をかしげる。

「ちょうどいいね。君の事、気になっているヤツらが集まってるみたいだし。あ、そうそう、湊。」

ルックが優しく湊に呼びかける。
そして、ん?と見上げた湊の頬に手を添え、もう片方の手を湊の後頭部に持っていく。

「ただいま。」

優しげ、というよりはむしろ妖しげな笑みを見せ、ルックはそう言うと、湊の頭をささえたまま、皆の前でキスをした。
周りが唖然とする中、真っ赤になっていまにも叫び出しそうな湊に気づいたルックは、皆に向かって“じゃあね”と言ったとたん、湊とともに転移魔法で消えてしまった。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ