君の手をとりたい
君はいずれ僕を忘れるだろうが
僕は君を忘れないだろう
どんなに冷たくうつくしい朝だろうと
喉が震えるほど静かな夜だろうと
僕は、
君の声や顔、仕草を忘れてしまうだろうが
僕は君を忘れないだろう
写真はいずれ燃えるだろう
そうでなければ融けてしまうだろう
君の手をとりたい
そして二人で暗い海を逃げ出すのだ
君は少し前から笑わなくなるだろう
僕は泣かなくなるだろう
いつのまにやらもう
肺がずいぶんと重くなっている
気付いてしまう前に
優しく目を塞いで
僕はきっと
これから何人もの手をとり
その掌に小さな海をつくるだろう
君はもう僕の名前もわからなくなるだろう
触れたいのに
僕の膚が君の心臓をかすめる
僕は君を忘れないだろう
君の手を離してしまったことを
僕は忘れないだろう
( 君の手をとりたい )
090301